復興住宅の今、TikTokで若者へ…「HAT神戸」住民30人の思い発信
阪神大震災後に大規模な災害公営住宅が整備された「HAT神戸」(神戸市灘区、中央区)の住民30人が被災体験やその後の生活を語る動画が10日、動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」で公開される。企画した住民団体は「震災を知らない世代にこそ実情を知ってほしい」と、若者に向けて思いを届ける。(久保田万葉) 「いつかは何とかなるものよ、と一生懸命やっていたらこの年になっていた」「まだ元気なお年寄りも多いけど、あと5年たったらどうなるんだろう」
2~3分の動画で住民が語るのは、震災後の生活再建に苦労してきたことや、入居した被災者の高齢化など、震災30年を前に感じる率直な思いや現実だ。 企画したのは、HAT神戸で地域の見守り活動などに取り組む「脇の浜ふれあいのまちづくり協議会」の委員長・石田裕之さん(44)。「住む場所や街ができて良かったという話ではない。その後の人々の暮らしにも目を向けてほしかった」と話す。 災害公営住宅は、震災で住居を失った被災者の生活再建を促す目的で整備された。HAT神戸は神戸市が主導し、1998年に街開き。計31棟(約3500戸)あり、市内で最大規模だ。
様々な地域に住んでいた人が集まったため、隣人と人間関係がうまく築けずに孤立するといった問題が当時からクローズアップされてきた。 神戸市北区出身の石田さんは2015年、「子育てしやすい」との理由でHAT神戸に移り住んだ。震災では、自身や家族に大きな被害はなかったという。 21年から協議会活動に携わる中で、自宅再建を諦めるなどして住み続けている人が多いことを知り、現状を広くSNSで発信し、若い世代にも震災や復興住宅の課題に関心を持ってもらおうと考えた。 自ら聞き手を務め、昨年10月から趣旨に賛同してくれた住民のインタビュー撮影を始めた。
震災当時、ポートアイランド(神戸市中央区)に住んでいた伊達宏子さん(69)はカメラの前に立ち、「ビルごと倒れて死ぬのかなと思った」と証言。HAT神戸の暮らしについて「見守る側も高齢化している」と生活への不安を口にした。 石田さんは「HAT神戸が直面する課題を知ってもらうことが、様々な災害からの復興を考える上で参考になる」と話している。 インタビュー動画はティックトックのアプリをダウンロードし、「神戸ふれまち」で検索すると無料で閲覧できる。