日銀・黒田総裁会見10月31日(全文1)これまでの方針を維持
時期のめどを外した意味は?
テレビ東京:テレビ東京の大江と申します。よろしくお願いいたします。前回までは少なくとも2020年春ごろまでというふうに時期のめどを記載していたわけなんですけれども、それを外した意味というのはなんでしょうか。まずお願いします。 黒田:これは2020年春ころといっても、当分の間といって、少なくとも2020年春ごろまではっていうことだったんですが、今回の展望レポートの委員の見通しをご覧になっていただければ分かりますように成長率が若干下振れしてますし、物価上昇率については今年来年と特に原油価格の下落を反映して、やや下振れをしてるという状況の下で、先ほど申し上げたように新しい政策金利に関するフォワードガイダンスを出したわけでして。2020年春ころまでっていうぐらいではちょっと終わらないと。相当長く現在の低い長短金利、あるいはさらにそれよりも低利の金利っていうこともありうるというふうにフォワードガイダンスを変えたわけですけども、それと同時にカレンダーベースのように取られやすい前のフォワードガイダンスは変えまして、あくまでもこの物価安定目標に向けたモメンタムにひも付けしたような形で、現在の低い長短金利水準、あるいはそれよりも低い、さらに低い水準っていうものが当分の間、続くというフォワードガイダンスを示したわけであります。
ポジティブな書き方にした理由は?
テレビ東京:もう1問お願いします。展望レポートを見てみますと初めのほう、国内需要への波及は限定的となりですとか、景気の拡大基調が続くとみられるとか、海外経済の下振れリスクなど不透明要因がまだまだある中で、かなりポジティブな書き方だなという印象を受けたんですけれども、この書き方にした理由はなんでしょう。 黒田:これは2019年度から2021年度の政策委員の経済見通しをご覧いただいても若干下振れはしてますけれども、2019年度はプラス0.6%、2020年度がプラス0.7%、2021年度がプラス1.0%ということで当面、若干、潜在成長率が下回ることがありうるとしても、2021年度までの見通し期間をならして見ますと潜在成長率並みの成長になるという見通しであります。 その背景には先ほど申し上げたように、1つは確かに世界経済の減速などを背景にわが国の輸出が弱含んでおり、鉱工業生産も弱含んでることは事実なんですけれども、設備投資が、これは日銀短観だけじゃなくてほかの見通しなどを見ましても、かなりしっかりしてるということであります。これは先ほど申し上げたように、単純な能力増強投資というよりも省力化投資とか建設投資とか、あるいは技術革新に向けた投資とか、より景気の短期的な変動に左右されにくい根強い投資需要というのがうかがわれますので、これは外需が当面弱くても、この設備投資を中心とした内需はしっかりしてくる。もちろんそのほかにも消費が、雇用者所得もプラスが続いておりますし、それからご案内のように公共投資はこれからさらに伸びていくというふうに思われますので、内需がかなりしっかりしてるということが1つであります。 もう1つは、世界経済自体についても、IMFが見通しを最近出しましたけども、今年度の見通しは3.0%。しかし来年の世界経済の成長は3.4%ということで、過去、確か10年ぐらいの平均の3.5%ゾーンに近いところまで戻っていくという見通しになっておりまして、世界経済の成長の回復が少し後ずれしてると、おそらく半年ぐらい後ずれしたとは思うんですけども、従来よりもですね。それでも来年の半ばか前半か、そのころには回復のほうに向かっていくというのがIMFの見方ですし、われわれもそんなところが正しいのかなと思ってますので、外需のほうもどんどん下がっていくっていうのではなくて、やはり来年には回復基調に戻るということもありますので、そういうことも踏まえて経済見通しを述べているということであります。 【書き起こし】日銀・黒田総裁会見10月31日 全文2へ続く