日銀・黒田総裁会見10月31日(全文1)これまでの方針を維持
海外経済の動向を中心に下振れリスクが大きい
ただし、リスクバランスは経済の見通しについては、海外経済の動向を中心に、下振れリスクのほうが大きいほか、物価の見通しについても経済の下振れリスクに加えて、中長期的な予想物価上昇率の動向の不確実性などから、下振れリスクのほうが大きいとみています。特に海外経済を巡る下振れリスクが高まりつつあると見られる下で、これらが顕在化した場合には物価にも相応の影響が及ぶ可能性があると考えられます。 こうした下で、今回の会合では物価安定の目標に向けたモメンタムについて評価を行いました。モメンタムを評価する際の主な要因のうち、マクロ的な需給ギャップを見ると海外経済の減速や消費税率引き上げなどの影響から、いったんプラス幅を縮小するとみられます。もっとも国内需要は、海外経済の減速の波及は限定的となり、増加基調をたどると考えられるほか、海外経済の先行き成長率を高めることが見込まれることから、マクロ的な需給ギャップは見通し期間を通じてならしてみれば現状程度のプラスを維持すると考えています。 次に中長期的な予想物価上昇率を見ますと、現状は横ばい圏内で推移していますが、家計や企業の物価に対するスタンスを見ると、一部には積極化の兆しも見られています。こうした中、先行き、マクロ的な需給ギャップがプラスを維持していく下で、予想物価上昇率は上昇傾向をたどると考えられます。
量的・質的金融緩和を継続
以上のマクロ的な需給ギャップと中長期的な予想物価上昇率の見方、さらには原油価格や国際金融市場の動向などを踏まえて、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れについては一段と高まる状況ではないと判断しました。もっとも、海外経済を巡る下振れリスクが高まりつつあるとみられる下で、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れについて引き続き注意が必要な情勢にあると考えています。 なお、展望レポートについては片岡委員が消費者物価の前年比について、先行き2%に向けて上昇率を高めていく可能性は現時点では低いとして反対されました。日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては、生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します。 また、先ほど申し上げたように政策金利については物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定しています。 今後とも金融政策運営の観点から注視すべきリスクの点検を行うとともに、経済・物価・金融情勢を踏まえ、物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため必要な政策の調整を行います。特に海外経済の動向を中心に経済物価の下振れリスクが大きい下で、先行き、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合には、ちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じます。以上です。