「古都京都の文化財」世界遺産登録から30年、令和の難題オーバーツーリズム対策は…松井孝治市長が語る
京都市は12月、「古都京都の文化財」の世界遺産登録から30年を迎える。コロナ後、円安を背景に外国人観光客が右肩上がりに増える一方、オーバーツーリズム(観光公害)という難題も再び浮上している。観光都市の今後のあり方を、松井孝治市長に語ってもらった。(聞き手 岡田優香)
増える訪日客、観光と市民生活の両立が課題に
コロナ禍で京都の街の灯が消えたのは寂しかったが、観光客がたくさん訪れ、市民生活が壊されることもあってはいけない。京都市が持続的に発展していくため、観光と市民生活の両立を、高いレベルで実現していきたい。
京都市観光協会によると、9月の外国人の宿泊数は約46万7000泊で、コロナ禍前を上回る水準となっている。
一方で、私道へ立ち入ったり、ごみをポイ捨てしたりと、観光客のマナー違反も目立つようになった。外国人観光客が街中を行き来し、大きなスーツケースを持って市バスに乗り込むことで、市民からは「生活道路が混雑している」「バスに乗れない」との不満も届いている。
混雑緩和へ「観光特急バス」導入、次の一手は
京都市は今、こうしたオーバーツーリズム対策に力を入れている。
今年6月、市民が利用する市バスの混雑を緩和しようと、「観光特急バス」を導入した。
京都駅と清水・祇園などの観光地を結び、運賃は通常の均一運賃区間(大人230円)の倍以上となる大人500円に設定した。観光客と市民とのすみ分けを図る狙いがあり、10月には観光特急バスの利用者が10万人を超えた。
現在は、観光客の運賃を市民より高く設定できる「市民優先価格」の実現に向け、国土交通省と協議している。市民と市民以外をどう識別するのか、民間バス会社の理解を得られるのかなどクリアすべき課題はあるが、実現すれば全国初の取り組みとなる。
オーバーツーリズム対策の財源となるのが、宿泊税だ。ホテルや旅館などの宿泊者に課される地方税で、京都市では2018年に導入した。現在は宿泊料に応じて1人200円、500円、1000円のいずれかを課税している。これまで、道路のバリアフリー化や無電柱化などの景観保全、観光客のマナー啓発などに活用してきた。