古橋亨梧に浮かび上がった問題点 過去5得点を検証…日本代表から遠ざかっていた理由【コラム】
相馬勇紀のクロスを除いては中盤の選手からのパスを受けたゴールがない
11月7日に発表された2026年アメリカ・カナダ・メキシコワールドカップのアジア最終(3次)予選、インドネシア戦、中国戦のアウェイ2連戦に向けた日本代表に古橋亨梧(セルティック/スコットランド)が返り咲いた。 【一覧リスト】森保ジャパンが「世界13位」 “ドイツ超え”最新ランキング「言葉を失った」 古橋が前回招集されたのは2023年11月に行われたワールドカップ・アジア2次予選のホーム・ミャンマー戦とアウェー・シリア戦の際。しかもそのときは怪我で不参加になったので、代表活動に参加するのは2023年10月、親善試合のカナダ戦、チュニジア戦以来となる。 2019年、森保一監督は古橋を初招集し、その後度々チームに呼んでいる。その間、古橋は神戸からセルティックに移籍して海外でも実績を積み上げてきた。ところが日本代表のFWとして定着したとは言えない。何が問題なのだろうか。 古橋はここまで21試合の出場で5ゴール。この5ゴールを分析することで古橋が克服しなければならない課題が浮かび上がる。 1点目は2021年3月30日に千葉で行われたミャンマー戦。GKのパンチングがふわりとあがるところを頭で押し込んだ。2点目も同じミャンマー戦で、浅野拓磨のパスに快速を生かして競り勝ち、流し込んだ。試合は14-0で勝利している。 3点目は同じく2021年6月7日のタジキスタン戦で、この試合に先発した古橋は浅野のシュートがこぼれるところを左足で蹴り込んで、4-1のゲームの先制点を挙げている。 4点目は2023年6月15日、エルサルバドル戦で相馬勇紀のクロスに合わせて6-0という大勝の最後を締めくくる得点を決めた。5点目は前回プレーしたチュニジア戦で、カットされたパスがこぼれてきたところを冷静に決めて2-0の最初の点を奪った。 アクシデント的にやって来たボールをきちんと点に結びつけられるところはストライカーの才覚と言っていいだろう。一方で不思議なのは、これだけパサーが揃っている日本代表にあって、相馬勇紀のクロスを除いては中盤の選手からのパスを受けたゴールがないことだ。 裏に抜け出すことを得意とする選手がパスを引き出せていない姿が浮かび上がる。確かに代表チームは集合から試合までが2、3日という状況も多く、即興的なコンビネーションが求められる。だが、なかなかその呼吸が合わない。 業を煮やした古橋が単独突破を見せる場面もあった。だが元々は伊東純也や三笘薫、中村敬斗らと違ってドリブルよりも点の勝負に強い選手。良さが生きているとは言えないし、本来の持ち味とは違うところでゴールは生まれていない。 また、代表発表記者会見の中で森保監督のこんな発言もあった。古橋の良さについて聞かれた監督は、「良さで言うと、直近のチャンピオンズリーグの試合の、背後に抜け出す、相手のディフェンスラインぎりぎりのところで駆け引きして背後に一気に抜け出すというシーンがありました。そういうダイレクトプレーというか、直線的にゴールに向かっていく、抜け出すプレーというところは生かしてもらいたいと思いますし、生かしてあげたいと思います」と称賛する。 だが、そこから「本当に彼の良さを出そうと思えば、我々が押し込んで試合をしなければ守備にもタスクを負ってもらわないといけないので、そこから攻撃に出ていくという部分になると良さは出ないと思います。なので、より押し込んだプレーで、ディフェンスラインぎりぎりのところで駆け引きをしてもらえるような展開に持っていかなければいけないかなと思っています」と続けたのだ。 古橋は前田大然のように前線から何度でも相手を追い回すタイプではない。また上田綺世のようにくるしいとき、ボールをキープして時間を稼ぐタイプでもない。むしろ押されているように見える時間帯でも前線で虎視眈々とカウンターを狙い、形勢を逆転しようとするプレーを得意とする。 そうなると、相手に押し込まれることが予想される展開では前線からの守備を考えるとメンバーに入れにくいだろう。特にワールドカップでは難しくなる。 だがそれでも森保監督がこれだけ呼び続けるのは、何らかの解決策を見出そうとしているのに間違いない。実際、スコットランドで得点王に輝き、チャンピオンズリーグにも出場している選手が日本代表で輝いてくれれば、チーム力はさらに上がるはずだ。 この2試合で、古橋が前線で相手を追い回し、中盤からのパスに抜け出してゴールを決める場面があれば今回の招集は大成功だと言えるだろう。特に浅野が負傷で招集できない現状では、森保監督にとってそういうプレーが出来る選手が特に必要なはずだ。 [著者プロフィール] 森雅史(もり・まさふみ)/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。
森雅史 / Masafumi Mori