<島津冴子>「らんま1/2」インタビュー(1) “1989年版”アニメ収録秘話 小太刀役は「最高レベルのテンション」
◇音響監督・斯波重治さんの教え 新人もベテランも全力で
小太刀は、強烈でぶっ飛んだキャラクターではあるが、そのはちゃめちゃな言動を見ていると悩みが吹き飛ぶような、不思議な魅力のあるキャラクターだ。島津さんは「それは、留美子先生の原作が素晴らしいからです。原作の素晴らしさがマイナスになるようなことは絶対しちゃいけないと思う」と語る。
「私たち声優は、原作がある作品の時は『この子はどんな声でどんなふうに話すのだろう?』と、イメージを持って仕事に向き合うのですが、私が一番大事にしているのは、それと共に『この子の気持ちは? 思いは?』という心のこと。しのぶも小太刀も『なんでこうなの?』という原点は、絶対に気持ちなんです。それを忘れちゃいけないと思っていました」
「うる星やつら」「らんま1/2」などの音響監督を務めた斯波重治さんから教わったことも大きいという。
「普段は穏やかな雰囲気の方ですけど、仕事はきっちりするのだと教えてくださった方でした。みんな随分鍛えられたと思います。私が新人の時に出演した『タイムパトロール隊オタスケマン』は、スタジオの中で新人は私だけ、周りはベテランの方ばかりでしたから、現場では何もかも吸収しなくちゃならないと、ずっと緊張している感じでした。ただ、『らんま1/2』の頃になってくると、新人とベテランの割合が変わってきて、若手が大勢いて、永井一郎さん(八宝斉役)、千葉繁さん(猿隠佐助役)、お兄様(九能帯刀役の鈴置洋孝さん)などベテランが少ない。そうなると新人の和気あいあいのムードが出てくるものだから、斯波さんが全体にビシッとおっしゃったことが何度かありました。それはベテランになっても大切にしなきゃいけないと思うことでした」
当時は、現在の事前に個別でアフレコする映像をチェックする形ではなく、スタジオでキャスト全員で同時に映像を見てから、収録に臨む形だったという。