<島津冴子>「らんま1/2」インタビュー(1) “1989年版”アニメ収録秘話 小太刀役は「最高レベルのテンション」
島津さんにとって、小太刀役は挑戦的な役だったという。それ以前、「うる星やつら」では「男なんてええ!」という叫びが印象的なしのぶ役、「魔法の天使クリィミーマミ」では綾瀬めぐみ役を演じてきた島津さんだったが、「また一つ違うレベルをディレクターさんとキティさんに投げかけられたんだなと思って、『そこに行かなきゃ』と思いました」と振り返る。
「小太刀役は、私としては、テンション的に今までの最高レベルの役でした。『うる星やつら』のしのぶでも、当時、ああいう演技をする方がほかにいらっしゃらなかったのでしょう、オーディションで私の声を聞いてくださったぴえろのプロデューサーの布川(郁司)さんは『すごい新人が現れた』と思われたそうです。私がそのお話を伺ったのは30年後でしたけど(笑)。それで『クリィミーマミ』にも綾瀬めぐみという主人公のライバル役で出演させていただきました。綾瀬めぐみも普通の女の子役ではなかった。だから、テンションの高い役もOKというイメージはそれまでもあったと思いますが、『らんま1/2』で小太刀をやるようになってから、いきなりいただく役が変わりましたね」
小太刀役は、オーディションではなく指名だった。
「シャンプーが(佐久間)レイちゃんに決まって、ぴったりだなと思って。私は『らんま1/2』に出られると思っていなかったのですが、ある日突然スケジュールが入りました。その時初めて小太刀の絵を見て、とても個性が強くて、強気のお嬢様、女王様タイプという印象でした。それで、屋根の上を飛んでいくとか、もう笑っちゃうじゃないですか。この役なのね!と、うれしくなりました」
小太刀がアニメに初登場したエピソードは、小太刀とらんまが格闘新体操でバトルする姿が描かれた。バトルのリングアナウンサーを演じたのは、島津さんが「ゴールドライタン」でも共演した井上瑤さんだった。
「最初からテンションが高い役で思い切り演じるので、こんなにやっちゃって良いのかしらと戸惑ったのですが、隣の席の瑤さんが『冴子、いいわよ』って言ってくださって(笑)。収録の時に『私、最近こういう役が多くて、穏やかな家庭アニメのような作品はないんですけど』とお話ししたら、瑤さんが『あなたにしかできない役を演じているんだからいいの』と言ってくださいました。瑶さんのその言葉は、私の中にずっと残っています。瑤さんのリングアナウンサーもすてきでしたよね。今も尊敬する素晴らしい先輩で、私が一番好きだったのは『うる星やつら』のランちゃんでした」