トランプ次期政権の経済運営で自ら名乗り、ラトニック氏野心隠さず
(ブルームバーグ): 米富豪イーロン・マスク氏に巨大なハサミの絵のテキストが届いた。マスク氏はこれに剣の絵で返した。
テキストの相手はウォール街の富豪で、キャンター・フィッツジェラルドの最高経営責任者(CEO)を務めるハワード・ラトニック氏。MAGA(米国を再び偉大に)信奉者で、トランプ第2次政権の人事担当責任者として候補者を提案する立場にある。
「私とイーロン・マスク、トランプでその解決策を見いだす」。ラトニック氏はトランプ氏が歴史的な返り咲きを果たす直前に出演したポッドキャスト番組でこう語っている。
解決を目指す問題とは、約2兆ドル(約309兆円)の財政赤字と連邦政府の役割を指す。 ラトニック、マスク両氏は連邦政府機関を解体し、膨大な官僚機構に自分たちのようなトランプ氏に忠実な人材を配置するなどして、米国の資本主義を解き放つ準備ができていると述べている。
今でもウォール街以外ではほぼ無名の存在であるラトニック氏にとって、これは驚くべき展開と言えよう。次期政権への影響力を競う他の金融関係者とともに、ラトニック氏は政権を担う人材を熱心に物色している。
一方で、ラトニック氏自身がその候補者リストに載っているのではないかとの臆測も根強い。キャンター・フィッツジェラルド社内では意気揚々とした雰囲気が漂う。だが、ラトニック氏の去就やトランプ氏の取り巻きにおける同氏の台頭が自分たちにどのような影響をもたらすか、幹部のバンカーやトレーダーでさえ見当もつかない状況だ。
ラトニック氏は前述のポッドキャスト番組でマスク氏とのテキストのやり取りについても言及。折に触れて次期政権を巡る議論の中心に自身を置いており、臆測に拍車がかかっている。
トランプ次期政権でラトニック氏が何らかの役職に就くかは誰にも分からない。しかし、トランプ氏から要請があれば、喜んで受け入れるとラトニック氏は公言している。財務長官の就任もあり得るが、そのポストを狙っているのは同氏だけではない。有力ヘッジファンドマネジャーのスコット・ベセント氏、ジェイ・クレイトン前証券取引委員会(SEC)委員長、トランプ第1次政権で米通商代表部(USTR)代表を務めたロバート・ライトハイザー氏などが取り沙汰されている。ブルームバーグ・ニュースは12日、関係者の話として主要顧問の一部は、財務長官の最有力候補として、ベセント氏を支持していると報じた。現時点では、誰が候補者で誰がそうでないかを断定するのは難しい。