オフィスで〝整う〟サウナ導入広がる 交流促進、組織力向上へ
愛知県内の企業の間でオフィスにサウナを導入する動きが広がっている。エンジニアリング会社のタマディック(実質本社名古屋市)は、名古屋市内の社屋「タマディック名古屋ビル」にフィンランド式サウナを整備。運用から3年目を迎え、これまでに延べ1700人以上が利用した。印刷関連事業の小林クリエイト(本社刈谷市)は、来年1月に稼働予定の新工場最上階にサウナを設ける。いずれも、従業員の福利厚生の一環。サウナを通じて心身を健康に保つとともに、コミュニケーションを促し、組織力の向上を図る。 (竹田ゆりこ) 「工場内とは思えないような施設に仕上がった。目や頭を使う業務も多く疲れが溜まると思う。リフレッシュに活用してほしい」。小林クリエイトは8月、本社敷地内に5階建ての新工場を完成。来年1月から稼働予定で、最上階には、サウナ施設「キートス・サウナ」を設置した。 キートスは、フィンランド語で「ありがとう」の意味。同時に8人が入れる本格的なサウナのほか、こだわりの陶器でつくった水風呂、シャワー、半露天の「ととのいイス」、ゆったりとくつろげるテラス、キッチン、ソファーまで、しゃれた高級ホテルのような雰囲気で従業員の心身を癒やす。小林友也社長は「従業員をはじめ、お客さまにもオープンなコミュニケーションの場を目指したい」と話す。
電設資材商社の富永電機(本社名古屋市)も昨年5月、新社屋の建設を機にサウナを最上階の5階に整備した。事前予約制で、従業員が業務時間外の好きな時間を使ってサウナでくつろげる。 自身もサウナ好きの富永晃司常務は、「毎月第1金曜日を『サウナ会』にし、コミュニケーションに生かしている。つくって良かった」と満足気。「評価はこれから。まずは浸透させたい」と、利用率を高めていきたい考えだ。 愛知県内の企業でサウナ導入の先駆けとなったのは、タマディックだ。2021年末に、サウナ発祥の地とされるフィンランドの大使認定オフィスサウナとして、約3千万円を投じてオープンした。森實敏彦社長はサウナ通で知られ、サウナ導入を検討する多くの企業から視察を受け入れている。 運用から3年目を迎え、サウナは平日の終業後などに、懇親会や女子会、体験会が開かれ従業員らでにぎわう。「狙いは、社内のコミュニケーションと健康。サウナを通じて、(人と人とが)ゆるやかにつながれる機会が増えた」と、森實社長。健康な従業員の割合「健康社員率」も年間、数パーセントほど上昇していると言い、「健康意識の醸成にも役立っているのでは」と実感する。
加盟企業240社超を誇る「企業サウナ部アライアンス」共同代表を務める、コクヨサウナ部長の川田直樹氏は「上下関係なく、フラットにつながり合える場がサウナ。サウナで人と組織がつながる、企業同士がつながる。そうしたオフィスとサウナの融合は、今後も全国で広がるだろう」と語る。 働き方が多様化し、身体的にも精神的にも、社会的にも満たされた状態を指す「ウェルビーイング」の会社づくりが求められるなかで、手段の一つとして「オフィスサウナ」への注目も、高まっているようだ。