東大発農業スタートアップが目指す「未来の適地適作」
気候変動は、農業を変えた。「青森県産リンゴの収穫量15%減 猛暑など影響」。メディアをにぎわす食と気候変動。気候リスクは農家の経営不安に直結し、離農は加速。需要はあるが、生産量が減れば、価格が高騰するのは必然だ。「負の連鎖を解く鍵は新品種だ」と東大発農業スタートアップCULTAの野秋収平は説く。強みは高速育種技術。数十年かかる新品種開発を約5倍速にできる。暑さや乾燥に強い新品種の開発へ、ホップの共同研究をキリンホールディングスと実施中だ。 「土地の気候にあった作物をつくるという『適地適作』の原則は、もう通用しません。気候変動が進む新環境でも、高品質な生産を続けられる新品種で農業を変革。これが、CULTAが提唱する『未来の適地適作』です」 現在、注力する作物はイチゴ。通常10年かかるなか、わずか2年で、輸出に適した新品種を開発した。長距離輸送でも実が崩れない棚持ちと甘さ。従来品種の紅ほっぺに比べ、40%以上優れた品種を生み出したという。 世界で求められる「ジャパンクオリティ」の農作物。日本のイチゴ輸出額年平均成長率は80%。マレーシアで自社品種の生産を開始すると、シンガポールからの連絡が鳴りやまない。CULTA品種をつくりたい農家と組み、24年中に新たに5県で生産開始。APAC6カ国から協業依頼も来た。「時代の風を感じる。気候変動時代のグローバル農業を日本から切り開きたい」 のあき・しゅうへい◎東京大学大学院農学生命科学研究科卒。在学中にCULTAを創業。研究はスマート農業分野。農業分野への画像解析技術の応用で、修士(農学)を取得。「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023」選出。1993年生まれ。
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