ソフトバンク「純増を追わない」宣言 喧嘩は買うがARPU重視
ソフトバンクは8日、2025年3月期 第2四半期決算を発表した。上期の売上高は7%増の3兆1,521億円、営業利益は14%増の5,859億円で、全セグメントで増収/増益となった。純利益は7%増の3,239億円。決算の発表とともに、通信サービスにおいては純増よりARPUを重視していくことや、AI投資についても説明した。 【この記事に関する別の画像を見る】 ■ 「純増だけを追わない」 ソフトバンクブランドでARPU強化 通信サービスなどのコンシューマ事業は、3%増の1兆4,269億円、営業利益は4%増の3,220億円。うちモバイル事業は、売上高7,888億円。 スマートフォン契約数は4%増の3,110万件。ソフトバンクとワイモバイルが堅調だが、今回、宮川潤一社長が示したデータは、2021年春の通信料値下げ以降、初めてワイモバイルからソフトバンクへの移行がプラスになったというもの。 20GBで約3,000円の価格帯が大きく伸びたことから、この数年は数の上ではワイモバイルが成長する形になっていたが、今期は「ペイトク」プランの強化などで、ARPU(1ユーザーあたりの平均収入)が高いソフトバンクへの移行が進んだという。 宮川社長は、「これを続けるのは難しいが、伝えたいことは『もはや純増だけを追い求める時代ではない』ということ」と述べ、契約者の純増より、「どちらかいうとARPU(の増加)にこだわりたい」と言及した。なお、今年度は100万件以上の純増を見込んでいるが、ARPU向上施策も下期には強化していく。 一方で、10月にドコモが「ahamo」の価格を据え置きながらデータ容量を30GBに増強。ソフトバンクもLINEMOとワイモバイルで11月から追従する形になった。宮川社長は、「(ahamo対抗により)競争力は維持できている。行き過ぎた値下げが本当にいいのか疑問を感じていて、そこに抵抗したいと思っていたが、他社で動きがあると対抗せざるをえない。中長期的には物価に応じた値上げぐらいは当たり前にできるマーケットになってほしい。ただ、売られた喧嘩は買うという主義でやっている」と説明した。 長期的な考えとしては、「端末は動かなくなるし、お客さんの動きも少なくなる。数を追うよりは獲得コストを抑え、中身を改善してくほうがいい。ソフトバンクブランドとワイモバイルブランドの入れ替えにお金を使って、会社の改造をしていく」と説明。具体的には、「ソフトバンクブランドの『ペイトク』(7,128円~)の魅力を高めていく。ワイモバイルからソフトバンクへの移行で重視されるのは、ひとつが『容量無制限』で、もうひとつは『ペイトクでお得』。この2点をどちらも取り込んで、ペイトクの魅力を磨いていきたい」とした。 ■ 生成AI時代のマーケットリーダーに エンタープライズ事業の売上高は11%増の4,458億円で「年間一兆円が見えてきた」という。特にソリューション事業が好調で、営業利益は12%増の944億円。 ディストリビューション事業は売上高が4,307億円で44%の増収で、特に「AIサーバー」の売上が469億円、うち外部向け売上が103億円となっている。「AIとの共存社会で、AIエンジニアを育成してきた。GPUの供給が安定してくれば活発な需要に応えていける」としており、外部販売では創薬メーカーなどの需要が強いという。 また、ディストリビューションを担うソフトバンクC&Sでは、サブスクリプション型のビジネスモデルに転換しており、AIサーバーのインテグレーションだけでなく、PayPayの店舗DXなどグループ内での連携に寄与しているという。 LINEヤフーなどのメディア・EC事業は5%増収の8,134億円。営業利益は40%増の1,525億円。ファイナンス事業は、売上高が19%増の1,298億円。PayPayが黒字化し、「底堅くなってきた」としており営業利益が136億円。PayPayの売上高は1,165億円で17%の増収。連結決済取扱高は前年比22%増の7.2兆円。PayPayの連結EBITDAは196億円で2年連続の黒字。 なお、ソフトバンクでは10月1日に株式の10分割を実施するとともに、PayPayマネーライトを1,000ポイント付与する施策を行なっている。この施策のアナウンス効果により、株主数は増加し、9月末で100万を突破。3月末時点では86万だったため、14万以上増えたこととなる。 また、株主の若返りも達成。40代以下の割合が27%から34%まで増えており、「狙い通りの成果がでている」とした。 次世代社会インフラでは、NVIDIAの「H100」を約6,000基まで拡大し、2025年度上期に約1万基まで増強予定。国内最大級のAI計算基盤を稼働させ、4,600億パラメーターの日本語国産LLMを公開。追加学習を加速し、「生成AI時代のマーケットリーダーを目指す」とした。 好調な上期決算を受けて、通期の業績予想も上方修正した。売上高は2%、1,500億増の6兆3,500億円、営業利益は6%、500億円増の9,500億円。
Impress Watch,臼田勤哉