利害が対立する時、方向性を一致させて混乱を収める方法
■組織内の対立は勝っても大きな代償がある 複数のステークホルダーが、相反するビジョンと異なる成功の定義を持っている場合、組織内での対立はほぼ避けられない。たとえば、ある会社のセールスチーム──新しい取引をまとめて、自分たちが喚起した需要を満たしたい──は、新しい製品を早く市場に送り出したいと考えるかもしれない。それに対して、エンジニアリングチームは、製品の不具合を取り除き、前回の製品を送り出した際に積み残した技術面の課題(いわゆる「技術的負債」)を解消するために、さらに時間をかけたいと思うかもしれない。 誰の主張を優先すべきなのか。残念なことに、たいていは、その場で最も声の大きい人物や、最も高位の肩書きを持っている人物の主張が優先される。しかし、この対立で「勝つ」ことは、必ずしも真の勝利を意味しない。むしろ、そうやって対立に勝ったところで、たいていは大きな代償がついて回る。 最も優れた人材が組織を去ってしまう場合が多いからだ。誰だって、常に人々がいがみ合っている職場に長く留まりたくはないし、重要な役割を担っているにもかかわらずいつも十分な予算が与えられていない職場で働きたいとは思わない。 本稿の2人の筆者はそれぞれ、高成長企業へのコンサルティング(ウォーカー)と、グローバル企業での基調講演(クラーク)を行ってきた経験を持つ。本稿では、その経験をもとに、誰もが同じ成功の定義を持つためにどうすればよいか、そして混乱が続く場合にどのような行動を取るべきかを論じる。 ■混乱の原因を突き止める すべてのステークホルダーにとって有効なシナリオを描くために、リーダーはまず、混乱の原因を明らかにしなくてはならない。特によくある成功の定義が社内で一致していない原因は、たとえば以下のようなものだ。 一つのパターンとしては、それぞれの部署の責任者が会社の目標を明確に理解していない可能性がある。そのようなケースでは、幹部たちは、その不一致がどのような時に、どのようにして生じるかを把握しなくてはならない。幹部たちが言わば鏡の中を覗き込んで、自分たちの姿をよく見ることも忘れてはならない。問題は時として、最上層部内の対立に起因しているためだ。CTO(最高技術責任者)とCFOの間で縄張り争いが起きているケースなどである。幹部がそれぞれ別々のメッセージを発していれば、それより地位の低いメンバーは、物事の優先順位を理解することなどできるわけがない。 もう一つのパターンは、ある部署の(あるいは複数の部署の)トップが自社で利用可能なリソースについてよく理解しておらず、自分たちの部署で担っている業務が会社全体の中でどのような位置を占めているかもわかっていないというものだ。 このほかに、さらに基本的なことが原因の場合もある。たとえば、お粗末なコミュニケーションも問題の原因になりうる。ある幹部が部下たちに大量のメールを送りつけて情報過多の状態をつくり出し、物事の優先順位を判断できないようにしているケースだ。 このような混乱の原因を突き止めることにより、目の前の問題を解決することが可能になる。