パリ五輪男子サッカーを通じて見えた日本の課題と収穫
パリ五輪の男子サッカー決勝はフランス対スペインの対戦となり、延長戦を制したスペインがバルセロナ五輪以来32年ぶり2度目となる金メダルを獲得して幕を閉じた。スペインは銀メダルだった東京五輪に続くメダル獲得となった。 8大会連続出場のU-23日本代表はオーバーエージ(OA)枠を使わずベスト8敗退。グループリーグ(GL)では3戦全勝したものの、準々決勝でスペインを相手に0-3の敗戦を喫し、力尽きた。 日本の戦いはどう評価されるべきか。課題はどこにあるのか。
「本気のチーム」を作れるかが成績を左右する
決勝は地元フランスと復権を期すスペインの対戦。いずれも日本が直近に戦っており、肌感覚で力量が分かるチーム同士の対戦だった。 フランスはOA枠にムバッペの招集はかなわなかったが、母国の英雄であるティエリ・アンリが監督、33歳のFWラカゼットが主将を務め、国を挙げて戦っている団結感があった。スペインもOA枠を使ったほか、優勝したUEFA EURO 2024にも出場した21歳のフェルミン・ロペスが大活躍した。 パリ五輪出場16チームでOA枠を使わなかったのは日本だけ。編成の時点で力量に差が生じていたことを思えば、今回の日本チームのベスト8という結果は悪いものではなかった。 むしろ、スペイン戦は0-3というスコアほど一方的だった訳ではなく、日本がボールを握って攻めきる時間帯もあった。大岩剛監督が2年4カ月で落とし込んだ戦い方の方向性は間違いではなかった。それに、選手たちは持っている力をほぼ出せていた。 裏を返せば、だからこそモヤモヤ感が残っている。「本気のチーム編成」をするのは協会の仕事だからだ。
交渉力不足が浮き彫りになったOA枠問題
パリ五輪に向けては「今のベストメンバー」という言葉がしばしば使われた。サッカーは常にそういうものだし、ケガ人は仕方がない。しかし、今回のOA枠に関しては使わなかったのではなく、使えなかったのだ。 聞くところによると、日本協会が欧州クラブに交渉に行っても「今回は東京でやるわけじゃないのだから出さなくてもいいだろう」というムードで、前向きな交渉に持ち込むことさえ困難だったという。しかし、日本以外の国はOA枠を使っている。だからモヤモヤする。 パリ五輪での日本の選手たちの熱量は素晴らしく、五輪8大会連続出場という大きなプレッシャーのかかったU23アジアカップを乗り越えてきた自信や一体感は、OA枠を使わなかったことによって一層高まっていた。一方で、日本サッカー協会は近年、ドイツに拠点をつくって選手の所属クラブと密にコンタクトを取っているということを強調していたが、果たしてそれが機能したのか。 欧州クラブからの五輪への招集が難しい流れは今後も続くと予想される。そういった中で、今回のパリ五輪は日本が五輪をどういう大会ととらえ、どういうアプローチをしていくか、未来への岐路と位置づけられるのではないか。