パリ五輪男子サッカーを通じて見えた日本の課題と収穫
グループリーグの戦いでも選手たちは少なくない収穫を得た
一方で、選手のパフォーマンスに目を向けると、課題はもちろんあるが収穫も少なくなかった。 初戦のパラグアイ戦は相手が早い時間帯に10人になったことで戦いを優位に進めることができた。5-0というスコアは相手の自滅によるところが大きいが、これまで日本が苦手としてきた南米チームに対して主導権を握る戦いを出来たことには、この年代の日本の選手たちの実力が上がっていることを感じた。いずれA代表に入っていくであろう彼らにとっては今後の財産になるに違いない。 続くマリ戦は3月に京都で行った親善試合の借りを返す完勝。同じ相手に連敗しないという観点でも及第点だった。イスラエルは決して侮ることのできない相手だが、この試合でもしっかりと勝利を手にした。ただ、グループリーグ3連勝、無失点という勢いと、OA枠の選手がいないことでより高まった結束力をもっても敵わなかったのが準々決勝で対戦したスペインだった。 象徴的だったのはやはりフェルミン・ロペスの2ゴールだ。反対に、日本は40分に細谷真大が相手を背負ったままボールを収めて、ターンから見事なシュートを打ったが、オフサイドと判定された。個の力の中でも決定力の差は勝敗に最も響く。これは個人個人が強化していくしかない。
トーナメントの戦い方を検証・再考せよ
ベスト8の顔ぶれをあらためて見回すと、日本、フランス、スペイン、モロッコ、エジプト、パラグアイ、アルゼンチン、アメリカ。A代表のW杯出場経験が多い国であり、エジプトとパラグアイ以外はカタールW杯出場国だ。 一方、グループリーグ敗退組はウズベキスタン、イラク、イスラエル、ウクライナ、ドミニカ共和国、マリ、ギニア、ニュージーランド。カタールW杯出場国はない。 やはりA代表と五輪世代チームの実力は連動しており、日本も一定のレベルにあることが分かる。 ただし、日本は7大会連続でW杯に出場しているのにベスト16の壁を破れないA代表と同じように、U-23日本代表も8大会連続出場の間にベスト4の壁を一度も破ることができていない。これだけ連続出場していれば一度くらいは勢いや多少の幸運で表彰台に上がっていてもおかしくない。 だが、そのラインを破れない。なぜか。トーナメントに入ったとたんに日本は勢いをいったん休止してしまうからだ。上位に進むチームは逆だ。決勝トーナメントに入ってからギアを上げる。パリ五輪のスペイン戦はギアを上げきれなかったという印象ではないが、敗戦という結果は受け止めなければならない。トーナメントでギアアップできるチームマネジメント力をつける必要がある。 ピッチで存在感を見せた藤田譲瑠チマ、守護神として何度も日本を救った小久保玲央ブライアン、オールラウンドのストライカーとして成長を見せた細谷真大をはじめ、選手たちが次に目指すのはA代表としてW杯で日本の力となること。パリ五輪で感じた個々の課題や収穫を存分に活かしていきたい。
VictorySportsNews編集部