日本の「空き家」を約345万円で買った、50代オーストラリア人夫婦。退職プロジェクトとして復元を試みる(海外)
地域社会への参加
夫妻がオーストラリアにいるときは、空き家には誰も住んでいないが、数台のカメラを設置したので、敷地を監視できるそうだ。 また、夫妻は空き家の取引を担当した不動産業者とも親密になった。その彼が夫妻に代わって週に1回、異状がないか確認してくれている。 ふたりの空き家プロジェクトにとって、地元住民やより広いコミュニティと良好な関係を結ぶことが極めて重要になる。 「私たちはここですでにサポートネットワークを得たが、それは簡単に手に入るものではない。積極的にネットワークを築かなければならない」と、デボラ氏は言う。 彼女の話では、到着したその日から地元コミュニティに歩み寄り、町内会にも参加したそうだ。 実際、夫妻は地域社会への参加こそが、日本で空き家を買う際に最も重要な側面だと言う。 この点もまた、地元の空き家バンクが、夫妻がなぜ物件を購入するつもりなのかを詳しく知ろうとした理由だと、ジェイソン氏は言う。 近年、価格が手ごろであるだけでなく、日本は外国人が不動産を買うことに制限をかけていないこともあって、古い廃屋を買う外国人が増えている。多くの人にとっては、自国で不動産を所有するよりも、日本で空き家を買うほうが安上がりなのだ。 「ほとんどの場合、購入希望者は内見や購入申請の前に、物件を買う理由を尋ねられることになる」とBusiness Insiderに説明するのは、東京に本拠を置く不動産会社ブラックシップ・リアルティ(Blackship Realty)の共同創業者であるアレックス・シャピロ氏だ。 そして、地方自治体は、本当にそこに住み、地域社会に貢献し、地方税を支払う購入希望者を優遇すると付け加えた。 しかし、空き家に関するコンサルティングサービスを提供しているアキヤヘブン(Akiya Heaven)の共同創業者であるサミ・セヌーシ氏がBusiness Insiderに話したところによると、どの自治体も独自のルールを設けている。 「いくつかの地方自治体、特に高齢の自治体は、地元の特徴や文化を保存するために厳格なガイドラインを引くことが多い」とセヌーシ氏は言う。東京も含めて、より都会的な場所では、そのようなことはあまりないそうだ。 加えて、購入希望者は、特に状態の悪い空き家に関しては、家の修復に必要となる経済力を有していることの証明が求められることもある。 実際、空き家そのものは比較的手ごろな価格かも知れないが、修理費用はあっというまに膨れ上がる可能性もあると、ジェイソン氏が指摘した。 「かなりの時間と努力、そして資金を注ぎ込む必要がある。加えて、社会的な責任も。コミュニティにただ現れて、何もしないというのはありえない。家にかけるのと同じぐらいの時間を、コミュニティのためにも費やし、人々との絆を太くする必要がある」
Amanda Goh