「まるで資産運用ファンド」 NHKの金融資産は約9000億円…「収入と必要経費がトントンくらいが理想」
「まるで資産運用を生業にしているファンド」
もっとも、受信料収入の減少が続いたところで、約1万人の職員を擁する公共放送の経営は盤石である。 「NHKのバランスシートを見ると、まるで資産運用を生業にしているファンドではないかと見紛いそうになります」 とは、NHKの財務を分析している金融ジャーナリストの伊藤歩氏である。 「24年3月期の連結総資産は1兆4495億円。NHKが協会全体の財務諸表を公開し始めた09年3月期は9313億円だったので、15年で約5000億円も増えた計算になります。特筆すべきは現預金と有価証券をあわせた金融資産の多さ。15年前は4061億円でしたが、これが今回、8940億円と倍以上に膨らんでいます。総資産に占める割合は61%。上場企業でも、これだけ金融資産をため込んでいるところは滅多にありません」(同)
「国民に還元すべき」
民間企業であればアクティビストが騒いでもおかしくない数字だといい、 「有価証券も国債や地方債など、すぐに現金化できるものが多く、それだけ現金ベースの利益を生んでいるといえます。24年3月期単体決算では34年ぶりに赤字(136億円)に転じましたが、これは出金を伴わない減価償却費が多く、会計上では赤字となったためです。現に、事業キャッシュフローでは連結で696億円のプラスとなっている。また直近の内部留保も、連結では子会社を含めて5113億円と、6年前の1.4倍になっています」(伊藤氏) さらに続けて、 「NHKの役割は利益をため込むことではありません。公共放送としては、収入と必要経費がトントンくらいの形が理想。これだけ金融資産を持て余しているのなら、受信料を値下げするなりして国民に還元すべきではないでしょうか」(同) その必要経費のうち、番組制作費は24年3月期単体決算で3133億円となっており、 「前期が3168億円なので35億円ほど減少しています。内訳を見るとニュース番組の制作費が946億円から913億円に減っており、“公共放送としていかがなものか”と言いたくなります。一方で、大きな世界大会があると放映権料が生じるスポーツ番組は年ごとに上下しますから、465億円から503億円に増えている。またエンタメ・音楽は226億円とほぼ横ばいで、『日曜美術館』『きょうの健康』などのライフ・教養は30億円ほど減って836億円となっています」(同)