名スカウトが選んだ今夏甲子園の光ったドラフト候補13人
投手のピックアップについて片岡さんは、「数球団が重複するようなピッチャーは甲子園出場校の中にはいなかった。高校生なので調子の波はあるが、将来、プロでエースになるような投手はバッターを押し潰すような“うなるボール”を投げるもの。スピードガンの140キロ後半以上を平均できるピッチャーはいなかった」と手厳しい評価。片岡さんは、5人の名前を挙げたが、プロで使える姿が見えるのは、富山商の左腕、森田駿也だという。 「左投手は使い勝手がいいのでプロのスカウトは特に気をつけて見るが、その中でも一番は森田だ。体を上下バランスよく使えて、ストレートもそこそこ。とにかくスライダーのキレがいい。大学進学希望だと報道で見たが、プロに進んでも早い段階でワンポイントで使えると思う」。森田は、一回戦の日大鶴ヶ丘戦を6安打、8奪三振で完封勝利。次の関西戦でも、守りのミスで1点を失ったが、4安打11奪三振の力投。日本文理戦では途中降板してチームはサヨナラ負けを喫したが、ナンバーワン左腕の評価が高まった。 岩手県予選では150キロをマーク。バッティングも本塁打を量産、日ハムの大谷翔平と重ね、“二刀流”として注目を浴びていた盛岡大付属の松本裕樹は、右肘を痛めていた影響からストレートは140キロに満たず、変化球に頼るピッチングに終始したため、ネット裏のスカウトの評価も、真っ二つに分かれていた。「体もまだ使いきれていないしバランスも悪かった。肘の故障を考えると評価のしようがない。高校時代に肘を故障した選手が、プロで成功した例は少ない。巨人が大型左腕として指名した辻内もそうだった。ただ、素材的には素晴らしいものがある。肘が深刻なら打者で鍛える可能性もある。3年は見れるという余裕のあるチームは上位で指名するだろう」。 片岡さんは、他には、日本文理の飯塚悟史、明徳技術の岸潤一郎の名前を挙げて「この2人はバッティングセンスも兼ね備えている。野手転向も含めて、その身体能力とポテンシャルの高さが魅力」と評価した。「社会人、大学に進んで開花したプロ選手も多い。巨人の杉内や横浜DeNAでプレーしている高橋尚などもそうだった。プロに進むにしても『この選手なら、うちの監督が好きなタイプだから磨いてくれそうだ』という相性などもあるので、ドラフト中、下位での高校生の指名は難しく、一概に評価できない。重複で狙われそうな選手は少なかったが、可能性を持った選手はいた。一方、1、2年生の功素材が目立った大会だった。それらの選手には“来年、成長してまた甲子園に来いよ”という気持ちを持って楽しみにしている」。 片岡さんの目についた1、2年生のドラフト候補6人は以下の通り。高校生ドラフト候補たちの最後の夏も終わった。さて今秋のドラフト会議で何人がその名を呼ばれるのだろう。 ■1、2年編■ 平沼翔太(敦賀気比) 2年 178/77 右/左 投手 小気味いいプレートさばき 原田泰成(東海大望洋)2年 180/85 右/右 投手 馬力あり 吉田凌 (東海大相模)2年 181/72 右/右 投手 目につく球威とスライダー 藤島健人 (東邦) 1年 176/75 右/右 投手 球質重く頑丈な肉体。気持ち強し 峯尾京吾(東海大望洋)1年 175/78 右/左 捕手 打撃センス光る。スロー良し (文責・本郷陽一/論スポ、アスリートジャーナル)