ピュアな味と香りが調和 無化調中華と自然派ワインの記憶に残るマリアージュ
こうしたやさしい料理には自然派ワインがよく合うんです」と九鬼シェフ。ピュアで香りのあるもの同士の調和は味覚や嗅覚に強く訴えることは間違いない。九鬼シェフの中華料理と自然派ワインは、記憶に残るマリアージュが期待できそうだ。
鮮魚の蒸し物✕ミネラリー白ワイン
香噴噴では冷菜や一品料理、点心、麺類がアラカルトとコースで注文できる。豊洲市場も近いため、海鮮料理の「香港鮮魚の蒸し物」はスペシャリテとなっている。この日の鮮魚は、鹿児島産のアズキハタ。皮のゼラチン質がおいしいハタは、1.2~1.5キロの大きめのサイズを使用し、5日間かけて熟成した後、蒸して醤油だれをかけて完成。しっかり乾燥して熟成させた白身魚は上品でふっくら。やさしい味の中華醤油のソースがよくなじんでいた。
料理にワインをペアリングすると、九鬼シェフは料理をさりげなくアレンジしてくれる。鮮魚の蒸し物には発酵した塩レモンのスライスが添えられている。合わせたワインはフランス・ジュラ地方のシャルドネ。
「色は濃いですが、樽が強いわけではなく、熟したりんごのような味に軽いトースト香が混じったミネラル感のある白ワインです。芳醇な香りと豊かな酸が白身魚にも付け合わせにもよく合います」と彩也佳さん。塩レモンが添えられたことで一体感が増しており、九鬼シェフのアレンジも光っていた。
クリスピーチキン✕アロマティック白ワイン
飴色に輝く香港式クリスピーチキン「脆皮鶏(チョイペイカイ)」も香噴噴の名物。パリパリとした皮は丸1日水分を抜いて、飴を塗りながら油を回しかけて仕上げられたもの。焼き上げるのにはコンベクションオーブンが使われ、しっとりジューシーに中までおいしく作られている。脆皮鶏には、青唐辛子の漬物やパクチーなどが入ったミントのソースと山椒塩が添えられていて、爽やかな味にアレンジできるのもうれしい。
脆皮鶏におすすめなのは、フランス・アルザス地方のゲヴュルツトラミネール。「ライチの甘い香りと酸・ミネラルがあって、しっかりと味の染み込んだ脆皮鶏がすっきりといただけます」と彩也佳さん。皮のパリパリとした部分は食感が小気味よいだけでなく、ふんわりと五香粉の香りが漂い、しっとりとしたチキンの味とのコントラストもいい。爽やかなミントのソースにはライチやバラの芳香とキュッとした酸、蜜のような味が心地よく調和していた。