ゴールはどこだ?PGAツアーのメディア戦略 プロゴルフと音楽業界の共通点
レーザーはカメラに 次世代「ショットリンク」誕生
眠たい目をこすりながら、松山英樹のプレーを熱心に追いかける人々が日本には多くいる。テレビ中継はもちろん、パソコンやスマートフォンでスコアやプレーを知れる時代。進歩する技術が、既存のリアルに迫ろうとする動きは今も活発だ。少なくとも、米国のプロゴルフ界では。 「リアル+バーチャル」新時代のゴルフリーグTGLのイメージ画像 「ショットリンク」はPGAツアーのファンにはお馴染みのシステム。各選手のスコアをつくる、すべてのショットが記録され、どれだけ飛んだか、どれだけ長いパットを決めたか、といった情報を各ホールのイラストとともにデジタル環境で見ることができる。
2000年代初頭にスタートした同システムは、多くの大会ボランティアの協力があって成り立っていた。18ホールすべてのロープ際で待機しているスタッフが、選手のボールにレーザーを当てることで位置を計測し、2地点間の直線距離の集計データをマッピングする。より立体的な視覚デザインの「ツアーキャスト」も人気だ。
このショットリンクは今年、試用期間を経て第2世代(2.0)の運用を開始した。以前までのレーザーではなく、コース内に配置したいくつもの高精度カメラが、実際に放たれたボールの軌道をとらえる。ボールの速さや高さ、スピンの量や向き等を、弾道測定器のサポートも得て直ちにデータ化。「どこに飛んだか」だけでなく、「どうやって飛んだか」という情報の収集を本格化させた。
PGAツアーのメディア部門でシニア・バイスプレジデントを務めるルイス・ゴイコリア氏が解説する。「フェードしたのか、ドローしたのか、どこに落ちて、どれだけ転がったのかをトラッキングする。コースでショットリンクに関わる人的リソースは毎週のべ数百人必要だったのが、50人、30人…あるいはそれ以下になった。そして1.0(レーザーを用いたシステム)は別会社のライセンスだったが、2.0ではツアーに特許があることも大きな違いです」
ゴルファーの一打を解剖する膨大なデータは、いまのところ一般ユーザー向けではなく、主に放送や配信の質を高めるために使われる予定。いずれは、スポーツベッティングの場への提供も考えられる。選手個々のプレーから付加価値を発掘し、莫大な投資のリターンにする。