観光白書2024が発刊、消費拡大効果高いコンテンツを重点支援、カギは地方部での滞在の促進
政府は2024年6月18日、令和6年(2024年)版「観光白書」を閣議決定し、発刊された。今回の白書は3部構成で、特に第III部で2024年度に講じようとする施策について、観光立国推進基本計画の柱となっている「持続可能な観光地域づくり」「地方を中心としたインバウンド誘客」「国内交流拡大」の観点から詳細に紹介。インバウンドについては、地方誘客促進に向けた事例紹介や分析もおこなった。
持続可能な稼げる産業へ変革を
まず、持続可能な観光地づくりについては、地域一体となった観光地・観光産業の再生、高付加価値化が不可欠として、ハード面に加え、シームレスな予約・決済が可能な地域サイトの構築をはじめとした面的なDX化によるソフト面の取り組みを複数年度にわたる支援策を活用して推進していく方針をあらためて強調。ガイドラインに基づき、財務や経営指標、適切な労働環境の整備、PMSといったITシステムなどの活用による高付加価値化に向けた経営をおこなう登録宿泊事業者を補助事業などで積極的に支援し、「持続可能な稼げる産業」への変革を促すとした。 このほか具体的に、観光DXで地域が抱える課題をITによって解決するスマートシティ促進のための都市データ連携基盤の実装支援、海外の有望な観光関連企業の誘致による観光産業の革新、DMO間の連携強化、オーバーツーリズム対策の先駆モデルの創出、駅周辺などにおける観光・まち一体再生の推進、自然の風景地を生かした地域づくり、国家戦略特区制度の活用などに取り組んでいることも盛り込んだ。 なお、能登半島地震への対応に関しては、ふるさと納税を活用した特産品販売、旅行を促進するとともに、被害が甚大だった能登地域については復興状況をみながらより手厚い需要喚起策を促進する。
消費拡大効果高いコンテンツを重点支援
次に地方を中心としたインバウンド誘客に関しては、消費拡大の効果の高いコンテンツとして、アドベンチャーツーリズム、アート・文化芸術、ロケツーリズム、ガストロノミーツーリズム、酒蔵ツーリズムなどを挙げた。特に、ガストロノミーは食の専門家による伴走やユニークべニュー活用といった環境整備を強化する、また、日本酒、焼酎、泡盛などの伝統的酒造りは2022年にユネスコ無形文化遺産へ提案後、2023年3月に再提案しており、2024年12月に審議が見込まれている。各団体とも連携しながら、さまざまな広報活動に取り組む。 魅力ある公的施設の公開・開放にも力を入れる方針だ。迎賓館赤坂離宮、皇居、京都迎賓館、京都御所といった都市部だけでなく、御料牧場、首都圏外郭放水路などでのプロモーション、地元商店・飲食店との連携を強化し内容の充実を図る。国立公園の魅力向上とブランド化、滞在型農山漁村の確立・形成にも積極的にも取り組む。一例として、農泊などと連携した農村地域でのジビエ利用拡大を図るため、処理加工現場でのOJT、プロモーション、ジビエを取り入れた食事メニューや商品の開発を支援する。2025年大阪・関西万博を契機とした情報発信、新型コロナによる変化を踏まえたMICE誘致・開催の意義の発信、ユニークべニューの活用なども盛り込んだ。 一方、インバウンドの活況に伴い、日本語を解さない外国人の警察への急訴、相談なども急増している。警察職員とのコミュニケーションの円滑化を図るため、多言語翻訳機能を有する資機材を操る教養支援やトラブルを想定した訓練の実施にも努める。 国内交流拡大では、温泉入浴と合わせて周辺の地域資源を積極的に楽しむ新しい温泉地の過ごし方である「新・湯治」の推進、海事観光の情報発信強化、ワーケーション、ブレジャーの普及・定着や休暇を取得しやすい職場環境の整備などによる国内旅行需要の平準化、ユニバーサルツーリズム推進などに積極的に取り組む。