【円安抑止へ2つの処方箋】レパトリ減税案とNISA国内投資枠、その役割と効果を徹底検証
「5%の摩擦」でも効果はあるか
もちろん、09年度税制改正を経て「外国子会社配当益金不算入制度」が導入されており、既に保有割合25%以上の海外子会社から受けとる配当益金の95%相当額が非課税所得とされている。それゆえ、残り5%部分を非課税にしても大きな効果は期待できないという声があることも承知している。 だが、米国や英国やシンガポールのように100%不算入の国もある(保有割合は米国で10%以上、シンガポールで15%以上、英国でゼロ%以上だ)。また、ドイツやフランスでも95%以上の不算入が認められているが、保有割合の条件がドイツで10%以上、フランスで5%以上と日本よりは若干緩い。日本の95%不算入が特別恵まれているという訳ではない。 「34年ぶりの円安」で国民生活が本当に脅かされていると考えるのであれば、わずか5%であってもこだわる価値はあるのではないか。また、政府が主導して円買いフローを創出しようという姿勢は投機的な円売りを抑制する効果も期待できるだろう。 さらに、実質的な効果もやり方によっては期待できるかもしれない。例えば、「5%の摩擦」を除去した上で使途(例えば賃上げなど)を定め、その条件を満たした場合は国内活動における税優遇があるとすればどうだろうか。もちろん、制度設計としてはさまざまな条件を付けるよりもシンプルであった方が良いが、「条件次第で恩恵が段階的に大きくなる」という発想はあり得る。 もしくは、シンプルに為替需給の論点だけに着目した強硬策であることを断った上で提案するならば「当該年度に稼いだ海外利益は〇〇年以内に還流させなければ、税率を倍にする」といったやり方なども考えられる。「戻さないのなら2度と戻せなくする」というアプローチはまさに力業だが、「必ず日本国内にワンタッチさせなければならない」という条件さえ満たして貰えれば円相場の需給はそれだけで助かる。単に現状追認を強めるだけというリスクもあるが、やはり強いメッセージ性はあるように思う。