ロードスター新型試乗 0.2秒の進化でさらに深化した“人馬一体感”
4代目にあたるND型ロードスターは、2015年に発売された。マツダのロングセラーのオープンスポーツカーだ。2024年1月に4代目ND型ロードスターとしては、最も大きな改良が施された。大幅改良されたロードスターの走行性能について、試乗を通して紹介する。 【写真8枚】座席・エンジン・ハンドル回り…新型ロードスターの画像を見る
わずかな違いにも深化を感じる改良
4代目ND型ロードスターの大幅改良のきっかけとなったのが、eプラットフォームという電気・電子プラットフォームの一新だ。法規制に対応するこの機会を利用して、ロードスターのコンセプトでもある人馬一体感をより深化させるための多くの改良が施された。 まず、直4 1.5Lエンジンの出力を向上させた。国内のハイオクガソリン用セッティングを施し、最大出力を4psアップ。132㎰から136㎰となっている。レブリミットや最大トルクなどに変更はない。 最高出力が4㎰アップしたことは、サーキットで高いスキルをもつドライバーが乗れば、タイム差が出るのかもしれない。だが、一般道でその差を感じ取ることはできなかったが、やや高回転域での伸びの良い感覚はあった。 最大出力の向上よりも、アクセルレスポンスが良くなっていたことの方が分かりやすかった。MT車には、RFの2.0Lも含め、駆動力制御に最新の制御ロジックを導入したからだ。アクセルを踏み込んで加速するシーンだけではなく、アクセルを緩めて減速するシーンでも、スッと減速を開始する。そのスピードは、約0.2秒改善。 たった約0.2秒、わずか4㎰のパワーアップ。この微妙な改善が、よりロードスターの人馬一体感を深化させているのだと実感した。
掌で路面状況を感じ取れる電動パワステ
ステアリング操作フィールにもこだわり、電動パワーステアリングにも改良がくわえられた。 ・コントロール性の改善(ステアリングギアの構造変更によるフリクション低減の影響) ・新制御による自然で緻密なフィードバック(モーター制御をマツダ内製化、戻し側制御の緻密化) ・街中から高速・高Gまで一貫したアシスト(ステアリングトルクセンサの容量アップ) こうした改良により、ステアリングから伝わる路面の凸凹やタイヤ状況が分かりやすくなったように感じた。最近「ステアリングフィールの希薄なクルマが増えた」と思っていただけに、クルマとの一体感をより感じる改良となっている。 今回の改良でDSC-TRACK(MT車のみ)が新設定された。これは、主にサーキットなどをより安全に楽しむことができる機能だ。 現在販売されている各クルマには、横滑り防止装置が標準装備されている。車体のスピンなど制御不能な状態に陥らないように、事前にブレーキやアクセルの制御し事故を防止する機能だ。安全面では非常に効果があり、滑りやすい路面では、この横滑り防止装置機能が無いとまともに走れないこともあるほどだ。この機能をもつ装備をマツダではDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)という。 ところが、サーキット走行時に、わずかにタイヤが滑ったり、もしくは意図してタイヤを滑らせたい時には、横滑り防止機能が邪魔になるケースも多い。サーキットではDSCをオフで走行することになる。 しかしサーキット走行は、限界を超えスピン状態に陥ることもよくある。最悪の場合、クラッシュすることもあるだろう。こうなると、愛車を壊してしまい多額の出費が必要となる。 マツダは、最悪のパターンだけは避けたいと考えた。そこで、生み出されたのが新制御モードである「DSC-TRACK」だ。スポーツ走行におけるドライバーの運転操作を最大限に尊重する制御ロジックとなっている。 つまり、多少のスライドなどでは、DSCは介入しない。ドライバーがコントロールできないような危険なスピン挙動に陥った場合に限って制御が介入する仕様だ。そのため、愛車を傷つけるリスクを減少させることができる。これもまた、「人馬一体」のための制御技術だ。スポーツ走行を好む顧客にとっては、ありがたい制御といえる。