大谷翔平の右肘負傷はバッティングに影響する? 術後のリハビリ・プレーへの影響を専門医に聞く
大谷翔平選手が2023年9月に2度目の「トミー・ジョン手術」を受けました。大谷選手は投手と打者の「二刀流」で知られていますが、肘の靭帯損傷や再建術がバッティングにどのように影響するのか気になるところです。 今回、日本肘関節学会理事長の正富隆先生に、肘のケガの原因やバッティングへの影響について詳しく解説していただきました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
投手がケガしやすい肘の靭帯とは
編集部: 投手が損傷しやすい靱帯とはどのようなものですか? 正富先生: 投手が最も損傷しやすい靱帯は、内側側副靱帯(MCL:Medial Collateral Ligament)です。これは、肘の内側に位置する靱帯で、腕を強く振って投げる動作によって大きなストレスがかかります。 特に、高速での投球によりこの靱帯には大きな負荷がかかり、繰り返しのストレスによって断裂や損傷を引き起こすことがあります。 編集部: 投球のどのようなタイミングで内側側副靱帯に負担がかかるのですか? 正富先生: 投球動作において内側側副靱帯に最も負担がかかるのは、投球動作の「レイトコッキング(足が着地し、肩、体幹、股関節が最大限しなるまでの期間)」から「アクセラレーション(投げる方の肩が最大外旋から加速しボールをリリースするまでの期間)」のフェーズです。 肩が最も外旋し、肘がしなる動きをするとき、前腕が外側に回転する力(外反力)が働き、内側側副靱帯が引っ張られ大きなストレスがかかります。 このフェーズで痛みを感じる時は内側側副靱帯が損傷している場合も多く、投球動作の繰り返しによるストレスが、内側側副靱帯の損傷や断裂につながるリスクを高める要因となります。 このため、投手は特にこのフェーズでの外反力によるストレスを最小限に抑える動作と適切に靭帯を保護する筋力の維持が重要となります。 編集部: 投球する際の腕の振り方が原因で損傷してしまうのですか? 正富先生: 投球動作の腕の振り方だけが原因ではありません。普段通りに投球動作をしても、急に肘に痛みを感じる場合があります。 これは、投球動作を繰り返しおこなっているうちに、疲労で肩周囲や体幹・下半身のコンディションが悪くなり、それがフォームの乱れをまねくことがあります。 体のコンディションやフォームが悪い状態に陥っていることには気づかないことも多く、そのまま投球をし続けた際に、肘に大きなストレスがかかり、痛みを伴う大きな損傷につながります。