19年世界陸上代表・豊田将樹がドーピング違反で2年間資格停止「意図的な摂取ではない」富士通が経緯説明
富士通は男子400mハードルの豊田将樹がアンチ・ドーピング規則違反の処分を受けたことについて、弁護団も含め、裁定と経緯をホームページで説明した。 富士通による経緯説明と豊田のコメント全文 2022年5月19日早朝、日本アンチ・ドーピング機構(JADA)によるドーピング検査の尿検体から禁止物質「トレンボロン」が検出されたことにより、2022年5月21日から2年間の資格停止処分が確定した。 豊田は2019年ドーハ世界選手権代表で、48秒87のベストを持つ豊田。22年6月の日本選手権以降、試合に出場していなかった。 尿検体からの禁止物質「トレンボロン」の検出量は1.4ナノグラム/mlで、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が分析機器に求める最低限の分析精度(2.5ナノグラム/ml)を下回る濃度だったという。 ドーピング検査により禁止物質(トレンボロン=非特定物質)が検出された場合、「原則として4年間の資格停止処分」となる。 豊田は禁止物質を摂取した認識はなかったとし、関係者を含め(1) 「意図的ではないこと」を立証 (2)「汚染製品に由来すること及び(重大な)過誤・過失がないことを立証」の準備を進めた。 「うっかりドーピング」にはサプリメントが原因となる場合も多く、豊田の摂取していたすべてのサプリメントなどを専門機関に送って分析したが、「禁止物質は検出されず、摂取経路の特定には至らなかった」。 トレンボロンは筋肉増強効果があることから「米国等では肉牛の肥育用に使用されており、海外のレストランで提供された食肉にトレンボロンが含まれていたことが原因で、ドーピング検査で陽性判定を受けたという海外事案」も存在しており、豊田はも検査の直前に「海外産牛レバーを自宅近辺のスーパーで購入し、これを調理して食べていた事実」があったため、その可能性も探った。 最終的にどの経路からも摂取の特定には至らず。それでも、調査結果や、検査前の過去7度の検査がいずれも陰性だったこと、そのうち直近の2件は本件の半年以内に行われたこと、さらにはトレンボロの効果が400mハードルという種目特性上、「必ずしも適合した物質とは考えにくい」などから、総合的に判断され、今年1月にJADAの規律パネルは「豊田選手側において、禁止物質(トレンボロン)の体内侵入経路を確定的に証明できたとまで認めることはできない」「しかしながら各事実を考え合わせると、豊田選手による禁止物質(トレンボロン)の摂取が意図的でなかったことを証明できたものと判断する」とし、本件が「意図的でないことを認定」が認められて、4年間から短縮され2年間の資格停止処分が決まった。 ところが、JADAは「規律パネルが意図的でないと認めたことと、処分期間の始期を1ヵ月早めたことは、いずれも誤り」と1月25日に不服申立て。日本スポーツ仲裁機構(JSAA)のスポーツ仲裁パネルによって、審理がされることとなり、4月2日、JADAの不服申立てをいずれも棄却する旨の判断が下った。 富士通は「日ごろから選手に対し必要な研修等を受講させるとともに、サプリメント・食品の摂取や医療機関から処方される薬剤等に対して注意喚起を行うなど、アンチ・ドーピング規則違反とならないように様々な取り組みを進めてまいりました」とした上で、「意図的でない旨が認められたとはいえ、アンチ・ドーピング規則違反として2年間の資格停止処分となった今般の結果は誠に残念であり、多くの関係者の皆様にご迷惑をお掛けしましたことを深くお詫び申しあげます」と謝罪。 「この決定を重く受け止め、同種事案が発生することがないよう、アンチ・ドーピングに対するチーム内の管理体制の見直しや選手への再教育等、再発防止に努めてまいります」としている。 豊田もコメントを発表。「多くの関係者の皆様にご迷惑、ご心配をお掛けしましたことを深くお詫び申しあげます」と改めて謝罪。「禁止物質を意図的に摂取したという認識は一切なく、その後1年半以上にわたり、多くの方々のご協力を得て、そのことを証明すべく取り組んで参りました」とし説明する。 その間、「大会に出場できないだけでなく、チームメンバー等とも練習ができない日々が続きました」といい、「限られた関係者」とのみやりとりしながら、立証する材料が見つからず「1年9ヵ月間、非常につらい時期もありました」と心境を明かす。 ようやく抜け出せるかと思ったところで、不服申立てもあり、「精神的にかなり落ち込みました」。それでも、「最初の通知から今回のスポーツ仲裁パネルの判断に至るまで、家族をはじめチーム関係者、恩師、弁護士の先生方に支えていただき、何とか乗り越えることができました」と感謝する。 5月21日以降は競技会出場が可能となる。「今後は気持ちを新たに練習に取り組み、資格停止期間終了後にできるだけ早く復帰したいと考えています」といい、パリ五輪に向けても「短期間ではありますが、出場権を獲得できるチャンスが残されています」と意欲を見せる。 競技だけではなく、「今回の私のような事例が繰り返されることのないよう、競技活動と並行し、微力ではありますがアンチ・ドーピングの啓発活動も行っていきたいと考えています」ともコメントしている。
月陸編集部