山の中のイルミネーション 高齢化により今季で見納め 愛知・設楽町
愛知県東部の山間部に位置する、設楽町の神田(かだ)地区の田んぼで夜間、雪山と花畑の大きなイルミネーションが点灯し、幻想的な光の空間を創り出している。「地区の人たちに寒い冬を楽しんでほしい」と10年前に地元有志が始めた取り組みだが、「暗い山道に突如現れるイルミネーション」としてクチコミで広まり、毎年、周辺の住民のみならず、県外などからも多くの見物客が訪れる一大イベントに成長した。 山あいの中学校で「町営塾」スタート・愛知県東栄町 学習環境のハンデ解消を しかし、メンバーの高齢化により、今季が見納めとなってしまう。 終了を惜しむ人が大勢訪れ、広さ4000平方メートルの田んぼに、4万3000個の発光ダイオード(LED)を使って表現された、赤い花畑と高さ30メートルの自然豊かな雪山を目に焼き付けている。
個人で始めた取り組みが地区の冬祭りに
始まりは20年ほど前。地元で「工房もしかしたら」を主宰する木工作家で、有志のリーダーでもある宮本典幸さん(71)が、自宅に電飾を取り付けたことがきっかけ。当時、家のベランダや外壁にイルミネーションを点灯させるのが地域ではやっており、ブームに乗って始めたという。 その後、個人で電飾の数を増やしつづけ、所有する田んぼや山、隣接する土地を借りるなどして規模を拡大。10年ほど前からは、点灯初日を「かだ冬まつり」と銘打ち、花火の打ち上げや地元の和太鼓集団による演奏、お汁粉の振る舞いなどで盛り上げるなど、地区の冬の祭りとして親しまれるようになった。まつりは今季も2018年12月に開催。住民ら80人が参加して点灯を祝った。
シカに食われ、風で接続外れ・・・数々の苦労も「楽しいから」
宮本さんはこの20年間で、電飾のLED化やレーザー光線の投光器7台など、機材を買いそろえた。それらに投じた金額は数百万円。点灯にかかる電気代も自己負担する。そこまでして続けてきた理由を尋ねると「楽しいから」と笑う。妻の考江さん(71)も「家庭行事の延長という感じ」と理解を示し、まつりの裏方や、訪ねて来る見物客の案内役を進んで行う。 イルミネーションは、「暗い山道に突如現れるイルミネーション」として、クチコミで周辺住民に広まったという。あえて宣伝をしなかった理由は、「自分も含め地元の人が楽しい」ということを第一の目的に始めたからだ。また周辺は夜間にトイレを貸し出す施設がなく、見物客や住民に迷惑をかけないようにするためでもあった。 山間部ならではのトラブルも経験してきた。ニホンジカが現れて、会場の田んぼを踏み荒らしたり、電飾用ケーブルを食いちぎられたりした。強風でケーブルの接続が外れることもあり、点灯確認や電飾をつり上げるロープの張りなど、期間中は毎日点検を続けている。