長時間のデスクワークで下腹部の不快感を抱く女性が増加中。それは”内閉鎖筋”のこりが原因かも
医療ライターの熊本美加です。 下腹部の不快な症状と聞いて、みなさんは何が原因だと想像しますか? 私が真っ先に思い浮かべるのは、GSM(閉経関連泌尿性器症候群)。これは更年期以降、女性ホルモンの激減によって起きる腟の痒みや痛み、尿漏れ、性交痛などです。 ところが最近、ミドルエイジだけではなく若い世代の女性たちにも「いても立ってもいられないような下腹部の不快感に襲われる」と訴える人が増えているのです。女性ホルモンが充分にあって、骨盤底筋もさほど衰えていないはずの20~40代の女性たちまで、陰部痛、下腹部痛腰痛、さらには頻尿、残尿感、膀胱炎といった症状に悩んでいるのは、いったいどうしてなのでしょう? 「それは、骨盤底筋のひとつ“内閉鎖筋”のこりが原因かもしれません」と指摘するのは泌尿器科医の安倍弘和氏(日本橋骨盤底診療所所長)。骨盤底まわりの悩みに向き合っている安倍先生に、近年患者が増えているという「内閉鎖筋のこり」について伺いました。
肩こりと同じ!動かさなければ骨盤まわりの筋肉だって硬くなる
内閉鎖筋のこりとはいったいなんなのでしょうか? 「たとえば肩こりは整形外科では筋筋膜性疼痛症候群(MPS)と呼ばれており、肩回りの骨格筋の硬直から、首や腰の痛みや腕が上がらない、腰が動かせないといった運動異常と、手足のしびれ、頭痛、吐き気といった感覚異常を引き起こします。 骨盤底の中にもたくさんの筋肉があり、肩こりと同じような現象が起きています。これを筋筋膜性骨盤疼痛症候群(MPPS)と呼びますが、起点となるのが、骨盤底筋の中のひとつである内閉鎖筋(ないへいさきん)のこりです。これによって膀胱、子宮、膣、肛門、腰痛といった下腹部痛みや、排尿、排便にトラブルが表れます。 こりがひどい場合、腟から内閉鎖筋をほぐすマッサージを行うと症状が改善するので、私はわかりやすく『腟こり』と呼んでいます」 “腟から指を入れてマッサージ”という、なかなか衝撃的な響きに戸惑いますが、まずは内閉鎖筋の位置から学んでいきましょう。 内閉鎖筋は、膀胱の両側の隣にあり、お腹の内側を通って股関節で直角に曲がり、お尻の横までつながっている特徴的な形をしています。膝を開閉するときに動く筋肉で、骨盤底筋の中でも広範囲幅を占めているので、周囲の臓器に影響を及ぼしやすいのです。 特に内閉鎖筋の筋膜は膀胱と接しているため、内閉鎖筋がこると膀胱の収縮も悪くなり、痛みが出たり、尿が漏れたり、だらだら出たり、出にくくなったりというトラブルにつながります。
熊本 美加