『AirPods』は補聴器として使える?補聴器業界の注目トピックス<2024年振り返り>【専門家解説】
実際、補聴器のかわりになるか?
一方で、本格的に補聴器の代わりとして使うには、バッテリーの駆動時間が心もとないともいえます。一般的な補聴器は、バッテリーが18~24時間は持ちますが、『AirPods』のバッテリーは最長で6時間とされているので、本格的に補聴器として使うにはまだ実用的ではないかもしれません。 しかし、何よりこの『AirPods』のヒアリング補助機能により、気軽に耳の健康に興味を持つ人が増え、耳にイヤホンを入れて音を聞く・会話をするということに抵抗がなくなることが広がっていくことを期待しています。
補聴器の最新トレンドは”AI” 各社の「ここがスゴイ!」
補聴器の最新トレンドは、なんといっても「AI」です。車の自動運転でも使われるような高度な処理をするAIを小さな本体に搭載した補聴器が、各メーカーから続々と発売されるようになりました。メーカーによってAIの活用の仕方も異なるので、気になる3社のAIの特徴をピックアップしてみます。 オーティコン デンマークの補聴器メーカー、オーティコンが2024年に発売した『オーティコン インテント』は、第2世代の高度なAI「ディープニューラルネットワーク2.0(DNN2.0)」を搭載。あらゆるシーンで快適に聞こえるように自動で音を調整し、細部までより明瞭に、バランスよく音の情景の全体像を届けるというものです。 さらに、独自の「じぶんセンサー」(4Dセンサー)により、補聴器ユーザーの頭や身体の動き、会話活動、音環境を感知します。たとえば、狭い会場で、前にいる人の話を聞きたいのに、近くにいる後ろの別の人の声を補聴器が拾ってしまい、話が聞き取りにくいといったことが解消されるでしょう。「聞きたい」と思っている会話を、脳に届けてくれるので、聞きたい会話をより聞こえるようにしてくれます。 オーティコン『オーティコン インテント』オープン価格
スターキー
アメリカの補聴器メーカー、スターキー社の補聴器に搭載されたAI技術は、「聞こえる」というだけでなく、「意識する」「集中する」「遮断する」「選別する」といった、私たちが無意識に行なっている「聴覚機能」までも自動調整してくれます。 これまで補聴器専門店で「こんな場所でこんな時に聞こえづらかった」などと話しながら何度も足を運んで調整していたものが、聞こえづらい場面で補聴器をトントンとタップするだけで、AIによって瞬時に判断・調整できるというものです。 スターキー『Genesis AI(ジェネシスエーアイ)』価格:片耳31万円~ フォナック スイスの補聴器メーカー、フォナックでは、2025年1月発売予定の補聴器に最新のAI技術を搭載。2つのチップを搭載し、1つのチップではこれまでよりさらに高度な処理をしつつ、もう1つの新たに搭載されたチップで、「言葉」と「雑音」をAIが瞬時に選別。これまで以上に快適に言葉が聞こえるようにしてくれます。 これまで、ガヤガヤした喫茶店にいるときは雑音全体を「抑制」することはできました。しかし、この新しい補聴器では新たに「音声」と「雑音」をAIで分離し、雑音だけを「除去」することで、騒がしい中でも全方向からの言葉がクリアになり、ラクに会話ができるようになるとのことです。 『フォナック オーデオ インフィニオ スフィア』価格:片耳51万2000円~ *** AIの進化によって、補聴器はユーザー一人ひとりに寄り添えるようになっています。これまでのように数パターンのシーン設定ではなく、その場面によって適切な音、聞こえ方を自動で調整できる。つまり、まさに今、あなたがいる場所での会話がよりよく聞こえるというわけです。 2025年もAIによる補聴器の進化は進み、さらに高価格帯以外にも、AIを搭載する機器の幅が広がっていくのではないでしょうか。