至近距離で戦車に砲撃された車両から奇跡の生還 19歳ロシア兵「肉弾にされた」
ロシア海軍第810独立親衛海軍歩兵旅団の部隊は10月15日、ロシア西部クルスク州でウクライナ軍が支配する700平方kmほどの突出部の東側外縁部に反撃を仕掛けた。海軍歩兵らはウクライナ陸軍の第61独立機械化旅団と第17独立戦車旅団とみられる部隊の陣地に突進したものの、鋼鉄と弾薬の壁にぶつかった。 【画像】BTR-82装甲兵員輸送車に搭乗していた19歳という瀕死のロシア兵 第810海軍歩兵旅団のBTR-82装甲兵員輸送車1両はどういうわけか、ウクライナ軍のT-64とみられる戦車が止まっている場所に自ら向かっていった。BTRが15mほどの距離まで近づいてきたところで戦車は125mm滑腔砲を発砲し、BTRに命中させた。「これほど至近距離で戦車が交戦するのは見たことがない」とマーク・ハートリング米陸軍退役中将はその映像に驚いている。 被弾して煙を上げるBTRからは、けがをしたとみられるロシア兵数人が茫然とした様子で下車し、その直後、最初に砲撃した戦車のすぐ後ろにいた別の戦車が、BTRに2発目の125mm弾を撃ち込んだ。 2日後、ウクライナ軍は現場近くで、BTRに搭乗していたロシア兵のひとりが半死半生の状態で倒れているのを発見した。「正直に言って、すごくほっとしました」。19歳というこのロシア兵は、ウクライナ国内のどこかと思われる病院のベッドでそう吐露している。 若い兵士は瀕死の重傷を負った小競り合いをこう振り返っている。「BTRに乗っていたら、ドカンときたんです。(中略)何も見えませんでした。足を失ったようでした。足はあとで切断されました。なんとかBTRからは脱出できました」 このBTRの乗員がウクライナ軍の戦車に気づかなかった、あるいは少なくともウクライナ軍の戦車だとは認識できなかったのは、たんに乗員が不運だったというだけではない。というのも、ロシアがウクライナで拡大して2年8カ月あまりたつ戦争の1100kmほどの前線の各方面で、このところ同様の事例が相次いでいるからだ。 10月中旬だけでも、ウクライナ軍の戦車はクルスク州突出部の両翼、ウクライナ東部ドネツク州クラホベの郊外、南部ザポリージャ州で、突撃してきたロシア軍車両に至近距離から砲弾を命中させていることが映像などで知られている。BTRが戦車に近づいた事例は、前線全体で広く認められる傾向の一例なのだ。