日本株は「軟調な展開」も、上昇すると予想。業績相場に入ることで下値は限られそう ~マーケットの振り返りと見通し【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】
4.債券
<現状> ●米国の10年国債利回り(長期金利)は、3月の雇用統計やCPIが市場予想を上回るなど、インフレの根強さを示す経済指標が相次ぎ、パウエル議長がタカ派的な発言をしたことを受けて、FRBの利下げ観測が大きく後退したため、大幅に上昇しました。 ●ドイツの長期金利は、ECBが次回6月の利下げ転換の可能性を示唆したものの、米長期金利に連れて上昇しました。 ●日本の長期金利は、日銀が金融政策を維持したものの、米長期金利の上昇と円安が進行するなか、追加利上げの観測から上昇しました。 ●米国の投資適格社債については、社債スプレッド(国債と社債の利回り差)がやや縮小しました。 <見通し> ●米国の長期金利は、当面もみ合いを続けた後、緩やかに低下すると想定しています。堅調な雇用情勢やインフレの高止まりを受けて、利下げ開始時期の先送りが警戒されるものの、年後半にはFRBによる利下げが実施されると見込んでおり、徐々にレンジを切り下げていく展開を予想します。 ●欧州の長期金利は、景気が停滞するなか、ECBが6月にも利下げに転じるとみられるため、緩やかに低下する展開を予想します。 ●日本の長期金利は、景気が緩やかに回復するなか、円安圧力が続いていることから、日銀の追加利上げが警戒され、やや上昇すると予想します。
5.企業業績と株式
<現状> ●ファクトセット(FactSet)によれば、日米の企業業績は過去最高水準を更新しており、堅調です。4月末のS&P500種指数の予想1株当たり純利益(EPS)は前年同月比+10.8%、TOPIXの予想EPSは同+17.6%と、いずれも2桁の伸びとなりました。 ●米国株式市場は、インフレの根強さを示す経済指標が相次ぎ、FRBの利下げ観測が大きく後退して長期金利が上昇したことから、投資家心理が悪化し、調整しました。NYダウは前月比▲5.0%と、6ヵ月ぶりの下落となりました。 ●日本株式市場は、米国株式市場の調整や中東情勢の緊迫化が重石となり、軟調な展開となりました。米長期金利の上昇を嫌気した米半導体株安の影響もあり、日経平均株価は前月比▲4.9%と、4ヵ月ぶりに下落しました。 <見通し> ●米国株式市場は、インフレの下げ渋りがみられるものの、米景気が堅調さを保っており、今後も米景気のソフトランディングを前提とした適温相場が続くとみています。FRBによる利下げは先送りされる可能性があるものの、米景気のソフトランディングに伴い企業業績の拡大が見込まれることから、投資家のリスク選好姿勢は継続するとみられます。このため、米国株式市場は緩やかにレンジを切り上げる展開を予想しています。 ●日本株式市場は、日本の名目GDP成長や製造業における景気循環の底打ちに伴う企業業績の拡大を背景に上昇すると予想します。これまでの上昇スピードの速さから調整リスクはあるものの、業績相場に入ることで下値は限られそうです。また、コーポレート・ガバナンス(企業統治)改革進展への期待に加え、自社株買いや新NISA(少額投資非課税制度)の資金流入など良好な株式需給も相場上昇を支えるとみています。
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