短い一文の中に「正直」を3回も! 歴史に残したいと願うほどひどかった萩生田光一の苦しい言い訳「正直申し上げて」
能町みね子さんがネットを巡回して拾い上げた言葉に独自の論考をねっとり加えた「週刊文春」の人気コラム「言葉尻とらえ隊」。この連載の約2年半分をまとめた文庫オリジナルの新刊『 正直申し上げて 』から一部を抜粋し、紹介する。(全3回の1回目) 【写真】この記事の写真を見る(2枚) 統一教会と政治家(ほぼ自民党)のつながりが連日報じられることによって、私の大好きな「苦しい言い訳集」がどんどん更新されて忙しい。なかでも萩生田光一の(2022年)8月18日の発言はあまりにひどくて笑えてしまい、私はこれを歴史に残したいと強く願いました。以下、引用。 「正直申し上げて、統一教会の昭和の時代の関連商法などのことは承知をしておりましたが、その後悪い噂を聞くこともなかったですし、そういった報道と接する機会もなかったものですから、正直申し上げてその団体(世界平和女性連合)と、統一教会の関係というのは、まあ名称は非常に似てますので、そういう思いはあったんですけれども、あえて触れなかったというのが正直なところです」 お気づきだろうか。 萩生田、なんと一文のなかで3回も自分の発言を「正直」だと主張している。 私、なぜ彼がこの時こんなにも“正直申し上げたく”なったのか本気で考えてみた。 日常会話で「正直言って」と言いたくなる時って、そのあとに言うことがあけすけすぎたり、不快に思われかねないことだったりする時だと思う。今から露骨なことを言うけど、こちらもそれは自覚してますから嫌な気持ちにならないでね、って感じである。 つまり、萩生田は話す内容なんか二の次に、「嫌な気持ちにならないで! 俺を責めないで!」と必死に叫んでいるのである。
中身が分からなくなるほどに、正直を3枚使って挟み揚げ。このすさまじい必死さ自体が著者の主張です。衣ばかりの分厚い天ぷらが一丁揚がりました。萩生田、この追及がそんなにキツいのか。疑惑がまだまだあるのかな。 ところで、この一連の回答のなかで、萩生田は今後の教団との関係について「適切に対応していく」というこれまた中身のない言葉を使って煙に巻いたのですが、これについて例えばテレ朝のニュースは「『関係を断つ』とは明言せず、『適切に対応していく』と述べるにとどめました」などと報じています。 「~と述べるにとどめました」だなんて、なんて政治家に優しい言葉だろう。もうこの言い方、禁止にしてほしい。 とどめたということは、本来はもっと言うべきことがあるということであり、つまり当人にとって不都合な部分を明言しなかったせいで意味不明な回答になったということである。報道はこのように素直に書いてほしい。 ということで、このニュースは「萩生田光一政調会長は、教団との今後について『関係を断つ』とは明言せず、『適切に対応していく』などと意味不明の供述をしてごまかそうとしました」。正確に書けばこうなるはず。 しかし、今は萩生田が集中砲火を受けていますが、セクハラ問題すら曖昧なままの細田博之も相当ズブズブだと評判ですから、忘れずにそろそろそっちにも目を向け直したいものです。細田のほうが問題が根深そうだし。 (「週刊文春」2022年9月8日号を加筆・修正) スポーツ紙の「コタツ記事」は「盗用」あるいは「剽窃」だ! 今後は私のような手法の原稿を「コタツ記事」と呼ぼうよ へ続く
能町 みね子/ライフスタイル出版