アルマヴェローチェが来春クラシック戦線に堂々と名乗り。16着大敗のブラウンラチェットは致命的な“馬体減”が痛手【阪神JF】
アルマヴェローチェの父は、パワーが必要な馬場を得意とする産駒を多く送り出すハービンジャー。本馬もパワーを要する洋芝馬場の札幌で稍重の新馬戦(芝1800m)を勝ち、続く重馬場の札幌2歳ステークス(GⅢ、芝1800m)はハナ差の2着に健闘していた。しかし舞台が道悪の洋芝であることからタイムは平凡で、またレース距離が2戦とも1800mであったことから、3か月ぶりの3戦目となるここでの好走に結びつけるのが困難な面があった。 しかし、中団で十分に脚をためた今回、これまでのレースからは想像できないような鋭い切れ味を発揮し、マイル戦にも対応したアルマヴェローチェ。乗り替わりで跨った岩田望来騎手の好騎乗もあって新味を見せることに成功し、来春のクラシック戦線に堂々と名乗りを上げたと言っていいだろう。「操縦性がいい」(岩田騎手)ことは、多頭数での激戦となるクラシックできっとストロングポイントとなるだろう。 2着のビップデイジーは菊花賞、有馬記念(ともにGⅠ)を制したサトノダイヤモンド(父ディープインパクト)の産駒。終いはアルマヴェローチェに切れ負けしたが、それでも上がり3ハロンは2位タイの34秒4と優秀だった。父の血を考えるならば、桜花賞よりも距離が延びるオークスに向いた血統だと言えるだろう。また、最内枠からコースロスを最小限に抑えて道中を進み、直線で馬場状態のいい外へ持ち出して末脚を引き出した幸英明騎手の好騎乗も光った。 3着のテリオスララ、4着のショウナンザナドゥは、ともに積極策から上位2頭に交わされての敗戦となった。逃げ・先行脚質のテリオスララは馬場状態が良くない内を通りながら自身の力を出し切ったし、ショウナンザナドゥは概ね先行有利のバイアスがあった馬場状態を考慮してのものだったと考えられる。結果として追い比べで沈んだが、ハイペースの流れを考えればよく粘っており、両者ともに次につながるレース内容と言えるだろう。 1番人気に推されながら16着に大敗したブラウンラチェットだが、まず前走比-12㎏という馬体減が痛かった。5日に発表された「調教後の馬体重」が430㎏で、すでに前走の440㎏から10㎏減らしており、その段階で厩舎側も気を配っていたようだが、初の長距離輸送を経て、レースへはさらに2㎏減らして428㎏での出走となった。まだデビュー3戦目で適正体重が分からないなか、これが決定的な敗因とは言い切れないが、小柄な馬だけに体重減が大なり小なり影響を及ぼしただろうことは容易に想像が付く。その面では、本馬を強く推奨したことは軽率だったと猛省せざるを得ない。 そして、クリストフ・ルメール騎手が「スタートは良かったが、窮屈ななか自分のリズムで走れなかった」というように、道中は馬込みを嫌がったか行きたがる素振りを見せて何度も首を上げ、メンタルの難しさをのぞかせたのも気になるところ。ただし、例えば昨年のオークス、秋華賞と牝馬二冠を制したチェルヴィニアでも桜花賞は13着に大敗しているように、幼駒の段階ではこうした不可解な走りが起こりやすいのも確か。ポテンシャルの高さは疑うところがないだけに、あらためて来年の初戦に注目したい。 米国から参戦したメイデイレディは掛かり気味の追走となり、直線では早々に脚をなくしての大敗となった。適性云々以前の問題として長距離輸送や臨戦過程を含め、馬のコンディションには疑問を感じた。 文●三好達彦
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