なぜホンダ新型「ヴェゼル」は純正のタイヤ銘柄が増えた? 辛口モータージャーナリストがFFと4WDの走りの進化を検証します
e:HEVのFFモデルのみ乗り心地と操縦安定性を改良
今回のマイナーチェンジでは、フェイスやライト類のデザイン変更、新しいボディカラーの採用といった外観の小変更を施した。それとともに、ハイブリッド車では往々にして課題となりがちな、走行中のエンジン停止、始動による突然の振動騒音の変化と増加、さらに登坂時や高速走行時などでエンジンが中高回転域まで回ってしまう際のエンジン音、逆にEV走行では目立つことになるロードノイズなどを改善し、室内静粛性の向上を果たしたという。 さらに、乗り心地と操縦安定性を向上とあるが、よくよく見てみれば、この部分に改良を加えたのはe:HEVのFFモデルのみだ。自身の記憶を辿ってみれば、この2代目ヴェゼルの発売からほどなくして、e:HEVのFFで1000km以上の試乗を行ったが、その際は、見た目や室内およびラゲッジの広さには満足できたものの、リア側の突き上げがひどくて、なにより後席は乗り心地がキツい。それにエンジンの始動、停止の際の振動、音の変化が煩わしいこと、高速域でのエンジン音がうるさくその領域では燃費も芳しくないことなど、短距離試乗ではさほど気にならなかったり、わからなかった点も知ることになった。 当のホンダとしても、このあたりは納得のできる仕上がりにまでは至っておらず、機会があれば改良を施したいと考えていたところなのだろう。
18インチタイヤはミシュランにブリヂストンを加えた2銘柄に
ちなみに、今回はタイヤ銘柄も、18インチ(225/50R18 95V)仕様に関してはこれまでのミシュランに加えて、今回はブリヂストンが加わり2銘柄となっている。ここでの疑問は、ミシュランとブリヂストンでは、車両開発側が求める性能は同じだったとしても、実際には特性がかなり異なるというのは、長い経験からして間違いない。だがしかし、理由を思い巡らしていたら、近年のミシュランの供給能力不足はホンダ向けに限らず聞こえてくる話なので、ヴェゼルもこれが車両生産の制約の一因となっていたのかもしれない。 その解決策として、供給体制に不安のないブリヂストンが選ばれた、というのは憶測ではあるが、サスペンションやステアリング系の制御見直しも、新たに採用されたブリヂストンのアレンザへのマッチングも考慮したものになっているのは想像に難しくない。 そもそも、このシャシーには18インチタイヤはキャパシティ的に厳しく、16インチ仕様のほうが走り、乗り心地、何よりバランス面でも好ましいというのは、マイナーチェンジ前からわかっていたことだが、そうは言ってもやっぱり見た目は大事で、そのせめぎあいの中で主力に添えられている18インチ仕様であるから、開発陣の頭を悩ますことになったのではないだろうか。 ちなみに、16インチタイヤは、Gグレード(ガソリンモデル)用だけ特性が変更されている。こちらは、コスト面などからだろう、車体側には新たな遮音対策は施しておらず、その代わりに従来品よりロードノイズを少し抑えたタイヤを新採用したとのことだ。