米政権、イスラエルに理解 イランの再報復を牽制 情勢悪化は大統領選でハリス氏に痛手
【ワシントン=坂本一之】バイデン米政権は同盟国のイスラエルによるイランへの反撃攻撃を自衛の措置として理解を示し、イスラエル防衛への「揺るぎない関与」を表明してイランの再報復を牽制(けんせい)している。中東情勢の悪化は11月5日の米大統領選で民主党候補のハリス副大統領にとって大きな痛手となりかねない。米高官は25日、イスラエルの反撃に米軍は参加していないと述べ、イランに自制を求めた。 オースティン米国防長官は同日、イスラエルのガラント国防相と電話会談し、イスラエルの自衛権を尊重する考えを改めて伝達。「イランや同国が支援するテロ組織」による攻撃からイスラエルを守る方針を強調した。 バイデン政権は、イランの弾道ミサイルなどを使った再報復に備え、米軍の迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」をイスラエルに配備している。 米高官は記者団に対し、イスラエルの反撃は人口密集地外の軍事施設が標的だとし、バイデン大統領らが民間人の被害を抑えるようイスラエルに働きかけてきたと説明した。イスラエルの反撃を認めつつも抑制的な対応を促し、戦火拡大の阻止を図っている。 同高官は、イスラエルとイランの「直接的な武力衝突は終わりにすべきだ」と強調。関係国に対し、イスラエル攻撃をやめるようイランに圧力をかけることを求めた。 中東情勢を巡っては、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスの戦闘でパレスチナ自治区ガザの民間人に多数の犠牲者が出たため、米国内では若者らを中心にイスラエルを支援するバイデン政権への反発が広がった。 バイデン政権はイスラエルにガザでの自制を求めてきたが、同国は強硬姿勢を崩していない。 中東情勢がさらに悪化すれば、政権ナンバー2のハリス氏は大統領選で票を大きく失う恐れがあり、イスラエルとイランによる報復連鎖を食い止めようと腐心している。 一方、米紙によると、大統領選でハリス氏と接戦を繰り広げる共和党候補のトランプ前大統領は、今月に少なくとも2度、イスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し、ハマスなどへの攻撃を続ける強硬姿勢に支持を表明した。