気候変動という「危機の乗数」と対峙する軍隊:なぜ自衛隊の戦闘機に「バイオマス燃料」が必要なのか
6月12日、航空自衛隊はF15及びF2戦闘機に初めてバイオマス由来原料や使用済み食用油などを原料とする持続可能な航空燃料SAFを使用した 防衛省 航空自衛隊Twitter(@JASDF_PAO)より
国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)において、アントニオ・グテーレス(António Guterres)国連事務総長は、人類は「気候地獄(Climate Hell)へのハイウェイを猛進している」として、気候変動の影響の深刻化に強い危機感を示した。事実、2021年の夏には、米国、カナダ、南欧において気温が50℃前後まで上昇したことに伴う大規模な山火事が相次いで発生し、ドイツ、ベルギー、中国が 未曾有の大洪水 に見舞われるなど、世界各地で大きな被害が発生したことは記憶に新しい。 すでに、2007年以来、国連安全保障理事会でも気候変動の問題が度々取り上げられている。その影響は、 食料や水などの自然資源を巡る争い を引き起こし、飢餓や貧困に苦しむ人々の移住を余儀なくさせ、周辺地域の緊張感を高める結果に繋がる。このように気候変動は、地域全体を相乗的に不安定化させてゆくことから「危機の乗数」と呼ばれ、安全保障上の深刻な問題と位置づけられてきた。地球温暖化に伴う世界の経済的損失は2030年までの20年間で約2.5倍に膨れあがり、2050年までに世界で2億人が「環境移民(Environmental Migrants)」になると見積もられる中で、人類にとって反理想郷的(ディストピア:Dystopia)な未来が待ち構えていることへの不安が高まるのは当然のことかもしれない。
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長島純