日本の「非常任理事国」入り濃厚 常任理事国と何が違う? /早稲田塾講師 坂東太郎のよくわかる時事用語
日本が来年10月に行われる国連安全保障理事会(安保理)の非常任理事国を選ぶ選挙で当選が濃厚となりました。国連は不完全さを指摘されながら他に取って代わる国際組織はなく、安保理は事実上その中心です。ところで単に「理事国になる」ではなく「非常任理事国になる」と表記するのはなぜでしょうか。それは安保理が通常の組織と異なる形態を持っているからです。
それぞれ何か国? どんな国? 権限は?
2014年9月、訪問した安倍晋三首相にバングラデシュの首相が安保理の非常任理事会選挙への立候補を取り止めると告げました。これで非常任理事のアジア太平洋枠で争う相手がなくなったので、日本が2016年から17年まで(任期2年)務めるのが「濃厚」といえるのです。日本はこれまで10回、非常任理事を務めており、実現すれば2009年~10年以来となります。 安保理は「国際の平和及び安全の維持」を目的とする国連の組織で事実上最も強い力があります。構成国は15で (1)常任理事国5か国(任期はなく常に議席を有する) (2)非常任理事国10か国(任期2年) で構成されます。平和への脅威や破壊活動、侵略といった出来事に対して経済制裁など軍事以外の措置を取ったり(国連憲章41条)、軍事制裁に踏み切ったり(同42条)という決議ができます。法的拘束力がある点が総会より強く、加盟国は従わなければなりません。 決議は15か国中9か国(過半数ではない)の賛成が必要です。ただし常任理事国(アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシア)が1か国でも反対したら「拒否権行使」となり、他の14か国が賛成していてもお流れになるのです。 拒否権以外、15か国は対等です。ある国や地域の紛争が問題となったとしましょう。公式協議には15か国以外に紛争の当事者も誘われ討議に参加できます。投票権はありません。 この公式協議でハッキリと自国の主張ができるというのが非常任理事国になるメリットです。言い換えるとあいまいな態度を許されず、特に常任理事国同士で賛否が割れているようなテーマでは日本がどう主張するか重い責任を負わされます。 安保理はテレビでおなじみの円卓での公式協議での討論で決まるといった単純な仕組みではなく、むしろ非公式協議でのやりとりの方が重要です。反対(または賛成)する常任理事国で「せめて棄権に止めてくれないか」とかき口説いたり、賛成ならば9票、反対ならば7票を集める工作をしたりと根回しの能力が求められます。その過程で安全保障に関するさまざまな情報が入ってくるのも非常任理事国ならではの利点。入っていないと他国から聞き出さなければならない重要情報が耳に入ってくるわけです。