大谷温存と中4日ジョンソン。日本Sの明暗を分けた監督のマネジメント力
さらに池田氏は、第5戦で中4日登板させたジョンソン起用と、温存させた大谷起用の差が、今シリーズの置かれた状況を如実に表している分析した。 「広島は、第5戦でジョンソンを中4日で使って敗れた。一方、日ハムは、大谷を温存させて日本一を取った。広島は、本来なら本拠地でジョンソン、野村で行くべきだっただろうが、ジョンソン、野村、黒田、岡田に続く5人目の先発がいないため、一戦でも早く日本一を取りたくて勝負を焦った。対して栗山監督は、7戦目までを考えて指揮を執った。7戦戦えるシリーズを想定してマネジメントした栗山監督と、先に4勝することを想定せざるを得なかった緒方監督のシリーズマネジメントの差も出たのかもしれない」 第5戦で先発したジョンソンの中4日登板はレギュラーシーズンでもやったことがなかった。ジョンソンは6回を無失点に抑えて、素晴らしい結果を出したが、6回を投げ終えたところで自らが申し出て降板した。崩壊していた中継ぎ陣を考えると、そのシワ寄せはあった。中継ぎでは、勝利の方程式を守ったが、先発では広島の野球を守れなかった。 対して栗山監督は、大谷を第6戦のストッパー、第7戦の先発と、2段構えで準備させていた。8回には、二死満塁で中田を迎えた場面で、バースではなくネクストバッターズサークルに大谷を送って、無言のプレッシャーをかけた。結果、バースをそのまま打席に立たせたが、広島バッテリーを混乱させたことは間違いない。ベンチの“余裕”が勝敗を分けたには間違いなかった。 リーグ優勝した“広島の野球”を貫こうとした緒方監督と短期決戦用のシリーズ野球を貫いた栗山監督。 優勝インタビューで栗山監督は、「どっちに転んでもおかしくないゲームばっかりだった。今、こうやってすべてが終わりましたが、勝った実感はあんまりなくて、野球の難しさばかりが心に残ったシリーズだった。僕もうちの選手たちも勉強させてもらった」と語ったが、中継ぎの差と、それを引き出したベンチのマネージメント力の差が際立った日本シリーズだった。