復興途上また苦難 「能登ばかり」「最悪な年や」
●災害重なり肩落とす 元日の能登半島地震で被災した奥能登を21日、線状降水帯が直撃し、応急仮設住宅が大雨による濁流に襲われた。「能登ばかりなんでこんなことに」「最悪な年や」。地震からの復興の道を少しずつ歩んでいた半島の住民は、無情にも重なった災害に肩を落とした。 【写真】土砂崩れで寸断された県道と垂れ下がった電線=21日午前9時50分、輪島市熊野町 輪島市では、氾濫した河原田川近くにある宅田町の仮設住宅の一帯が冠水し、複数の住宅が床上浸水した。屋内に流れ込む水から逃れようと、茶色く濁った水に腰の高さまで漬かりながら避難する住民の姿が見られた。駐車してあった車は、タイヤが隠れるほど水没していた。 三井公民館には、午前10時時点で1家族4人が避難した。上野久美子さん(54)=三井町中=は、自宅近くの川があふれそうになったため避難を決めたという。 上野さんの自宅は能登半島地震で準半壊した。「帰ったら家がないかもしれない。なんでこんなことになったのか。今年は最悪な年や」とつぶやいた。 上野さんの父周一さん(86)は、自宅のそばの沢の水量が増えていたと振り返り「生まれてからずっと住んどるけど、こんな水の量は初めてや」と表情を曇らせた。 熊野町の熊野トンネル付近では土砂崩れが発生し、通行できなくなった。道に積もった土砂を目の当たりにした男性は「中に誰も埋まっていなければいいが」と不安げに話した。 ●「雨もひどくて逃げられない」 門前の施設 輪島市門前町道下のグループホーム・ケアホーム「もんぜん楓の家」では午前9時半ごろ、裏山から濁流が流れ込んで床上まで浸水し、利用者40人を建物の2階などへ避難させた。職員がちりとりなどを使って、1階の床を覆った泥を懸命にかき出していた。 施設長の岡山人美さん(65)は「一気に濁流が押し寄せてきた。雨もひどくて逃げることもできない」とおびえた。