なぜ高校野球の新たなリーグ戦は拡大し続けているのか?『チームのために個人がいる』ではなく『個人の成長のためにチームがある』~野球指導者・阪長友仁のビジョン後編~【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.7】
日本が指導者と選手が対等の関係になるためには?
リーガ・アグレシーバの活動は年々広がってきている。またそのビジョンに共感する指導者たちも増えてきている。 今春からセンバツで導入された新基準バットについても、リーガ・アグレシーバでは「投手と打者の成長のためになる」と、2017年から低反発の金属バットや木製バットを推奨ルールとして導入してきた。 阪長がドミニカで見た指導者と選手の対等な関係についてこうアドバイスを送る。 「指導者が選手の立場までおりていき、選手と対等に付き合うことです。まずはそれをやる必要があります。上下関係を作らない、上から発言しない。指導者が選手に対してリスペクトをする。そもそも日本の野球だけではなく、日本の価値観の中にない部分でもあると思うのですが、まずは、ここから始めていかないといけません」 「また、選手自身がどうなりたいかを聞き出したり、選手自身が成長できるようなヒントを伝えていく。それには観察力が必要です。彼らにどういう声掛けをしていくか。また引き出してあげるのか。どの選手にどんな練習が必要なのか。それができるようになるためにも、指導者は多くを学び続けないといけません」 ところで、ドミニカの指導者たちは、なぜ選手たちと対等に付き合うことができるのか? 「メジャーリーグの指導方法を学んでいる部分もあると思うのですが、いい意味で社会全体でも大人と子供の関係性がそうなんです。大人と子どもの上下関係がないんです。お互いにリスペクトし合う文化がある。逆に偉そうにしてるとすごい嫌がられますね」 「『どっちが幸せですか?』という話ですよね。自分より弱い立場の人に、権力をふりかざすことが幸せなのか。それとも次の世代の人の夢があるなら、励ましながら、一緒に歩んでいく人生が幸せなのか。私は後者のほうだと思うので、そういう仕組みを日本でも作りたいと思います。それが野球であれば、トーナメントではなくリーグ戦という枠組みを作る方がやりやすいのではないかと思います」 「とはいえ、甲子園を否定したいわけではなく、甲子園にも価値のある部分はあると思う。ただ、それだけでこれからの日本の社会の中で野球というものが選ばれる時代になるのかなと思ったら、かなりクエッションマークなんですよね。そこで、自然発生的にやり始めたのが、『リーガ・アグレシーバ』という取り組みでした」
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