【坂口正大元調教師のG1解説】不運に泣いた1年、最後に運つかんだレガレイラ
<坂口正大元調教師のG1解説 トップ眼> <有馬記念>◇22日=中山◇G1◇芝2500メートル◇3歳上◇出走15頭 まず何より、ドウデュースの出走取り消しは残念でした。ですが、大変なことになってからでは遅いですから、陣営の勇気ある決断だったと思います。その主役が不在となったグランプリは、実力馬たちが軒並み折り合いに苦労するほどのスローになりました。 1番人気に支持されたアーバンシックは6着。2周目の3コーナーまで掛かっていました。ルメール騎手があれほど足を突っ張って抑える姿は、あまり見たことがありません。残り半マイルからようやくペースが上がり、やっと折り合いましたが、消耗は相当にあったと思います。加えて、少し頭の高い走法ですので、内から進路を選びながらでは加速しにくいタイプ。絶好と思われた内枠でしたが、馬群がだんごになるスローではあだとなりました。 勝ったレガレイラは、アーバンと同じスワーヴリチャード産駒ですが、こちらは牝馬で頭が低く、瞬発力にたけたタイプです。好位からスッと進路を確保し、重量差も利して一気に抜け出しました。2着シャフリヤールとの鼻差は運もありますが、枠順と重量差も多分にあったと思います。 昨年暮れのホープフルSを勝った後、今春は皐月賞、ダービーと牡馬への挑戦を続けました。それだけ関係者が能力を見込んでいた馬です。この秋は牝馬同士でも5着、5着でしたが、接触する不利などもありました。1年間、不運に泣いてきた馬が最後に運をつかむ。これも有馬記念です。 3歳牝馬の勝利は、60年スターロツチ以来64年ぶりだそうです。私は当時、大学生でしたが、父が調教師でしたので競馬が好きで、スターロツチもよく覚えています。レガレイラの勝利が、懐かしい馬を思い出すきっかけになりました。 2着シャフリヤールは大外枠からよくきたと思います。馬群の外でも折り合えたことが好走の要因でしょう。距離のロスより、折り合うことが重要になるほどのスローペースでした。 それを作り出したのは横山典騎手の3着ダノンデサイル。内枠で不利を受けた菊花賞と同じ轍(てつ)は踏まない、という意思が見える先行策でした。見事にペースを落とし、勝機を広げましたが、上位2頭とは瞬発力の差が出た印象です。(JRA元調教師)