【有馬記念・レース回顧】今年もペースが明暗を分けたグランプリ「こんなGⅠは他にない」の理由とは?
[GⅠ有馬記念=2024年12月22日(日曜)3歳上、中山競馬場・芝内2500メートル] 【渡辺薫&柏木集保 私たちはこう見た】 渡辺 アナウンサーが驚いたように「1000メートル通過は1分2秒9!」と実況していたが、まさに今年の有馬記念はスローペースが明暗を分けたな。 柏木 1200メートルで分割すると前半が1分15秒7で後半が1分09秒9。何と6秒近いギャップが生じました。3コーナー過ぎまでは有馬としては珍しくほぼ一団。11着プログノーシスまでが0秒8差以内と、スタミナを失う馬がほとんどいませんでした。 渡辺 うん。いわゆる〝後半だけのマイルの競馬〟というやつだ。結局、うまく立ち回り、かつ瞬発力がある馬が有利な展開になった。早めに動いたシャフリヤールのC・デムーロも「勝った」と思っただろうが…。戸崎圭がインで完璧なリードをしたレガレイラが切れ味でさらに上回った。 柏木 はい。中団でうまくスローの流れに乗っていたのが、その上位2頭でした。レガレイラは皐月賞以降、物足りないレースが続いていましたが、同じ中山のホープフルSが自身上がり35秒0の勝利。今回が34秒9ですから、この馬の一番いいところが出たといえるでしょう。馬群の中でもまれているようで、全然気にしていなかったあたりが精神面の成長でしょうか。 渡辺 それに3歳牝馬で54キロというのも大きかった。最後のハナ差はその4キロ差がものをいったな。とはいえ、一流の古馬勢と牡馬をGⅠで破ったことは大きな勲章だ。素直に称賛すべきだろう。 柏木 シャフリヤールは馬場先出しでチャカチャカしていましたが、返し馬で落ち着きを取り戻しました。積極策も匂わせていましたが、C・デムーロがためる競馬で切れを引き出しました。デキも良かったと思います。 渡辺 馬混みに入れずに外々のまま折り合いをつけるのはやはり〝技術〟なんだろうな。仕掛けどころもドンピシャだった。ダノンデサイルの逃げも絶妙だったが、インをぴったり回って1馬身半差の3着はまだ底力不足かな。 柏木 ダービーでは自身(上がり)33秒5を計時しましたが、出走中4位タイの数字。爆発的に切れるタイプではないので、むしろスローに落とし過ぎたかもしれません。とはいえ、3歳馬が3着以内に2頭入ったことは来年に向けては明るい材料ですね。 渡辺 アーバンシックはジリジリとしか伸びなかった。スタートひと息でもまれたこともあるし、菊花賞の内容からもスタミナ比べの方が合っている。 柏木 はい。この展開ですと出遅れは厳しいですね。どこかで脚を使わねばなりませんから。それでいて0秒5差なら悲観する必要はありません。 渡辺 期待したジャスティンパレスも馬群でもまれたパターン。もう少し早くスパートできていれば…。悔やまれる内容だが、5着ならまだ見限れない。 柏木 今年は〝有馬記念の難しさ〟が出たレースでした。今年のペースも遅かったですが、ジェンティルドンナが勝った10年前は2分35秒3。この10年で最も速かった2019年は2分30秒5と、同じ良馬場で勝ちタイムが5秒も違うGⅠは他にありません。〝どんな有馬になるか〟をまずは当てないといけませんね。
東スポ競馬編集部