「会社や家族が止めるケースも」骨髄バンク、適合したドナーの4人1人が“提供辞退”険しすぎる提供までの高いハードル
■医療ジャーナリスト「辞退に罪悪感を持ちすぎない方がいい」
では、どうすればより登録者が増え、かつ辞退する者が減るようになるか。市川氏は、辞退する人のメンタル面について語った。「せっかく登録してマッチした連絡がきたのに断るということに、罪悪感を持ちすぎない方がいいのは間違いない。マッチした数にもよるが、医療機関側も最大で同時に10人くらいにオファーする。その10人の中には当然、仕事が忙しいからと断る人もいる。また、一番マッチして体調も良くて若い、条件の中でNo.1の人を医療者側が選ぶこともある。オファーが来ても自分一人が断ったら、命を奪ってしまうかもしれないと思うほど、逆にそこが嫌だから登録しないという、一番の希望を奪うことにつながってしまう」と述べた。 アメリカでは登録者が約700万人、ドイツでも約600万人と、日本と比べて10倍以上いると言われている。「(ドナー登録も)もっとカジュアルにした方がいい。これぐらい多いと『自分以外にもいるだろう』と断れるし、断ったとしても仕事のタイミングや体の調子がいい人がやってくれる。ヨーロッパやアメリカの方がボランティア精神、他者のために自分が何かをする意識が強い。日本の方が、他者のために自分の何かを提供することに踏み切れていない人が多いかもしれない」と指摘した。 報酬に関しては慎重な議論が必要だ。金銭的なものを重視した場合、市川氏は「患者側とドナー側が直接お金のやり取りをすることもある。臓器移植でも大きな問題になったことがあるが、金が欲しいから『自分の腎臓を売ります』に近いことが起きてしまう。最終的に歪みが出てくるので、金は本人が得られないようにと国際的にもなっている」と状況を語った。それでも国内でも一部の自治体は、助成金が支払われるケースもあり、東京都杉並区では入院・通院に1日2万円、さらに勤務先の事業者に対しても1日1万円が出る。市川氏も様々な報酬に関しては「こういう状況になってきているので、インセンティブを入れなきゃいけないという話が出てくるのは、全然おかしいことではない」とした。 現在、市川氏がドナーにとって「最大のインセンティブ」と語るのは、患者から届く御礼の手紙だという。「移植を受けてうまくいったら、移植を受けた側から手紙をもらえる制度がある。その手紙を一生の誇り、一生の宝だと持っている方がいる。やはり自分の存在によって1人の人間が、確実に命が助かったという証拠が手紙。『本当にありがとうございました』というものに、何か自分が生まれてきた価値を実感させてくれる経験だ。骨髄バンクが仲介して、住所がわからないように届けてくれる」という。また市川氏は、ドナーになった人へより高い評価を求めた。「『骨髄移植をしました』という人がいたら、社会みんなで『すごくいいよ』と称賛されるようになればいい」とも付け加えた。 (『ABEMA Prime』より)