「会社や家族が止めるケースも」骨髄バンク、適合したドナーの4人1人が“提供辞退”険しすぎる提供までの高いハードル
■提供辞退者「登録してから何年後に適合ということもざらにある」
骨髄移植は臓器移植と異なる点は、骨髄が体内で増えること。提供した側もいずれ元に戻り、また移植を受けた側も成功すれば、骨髄を増やし、正常な血液を作るという、完全に治癒したような状態(寛解)が望めるという。それでも、ドナー側への負担により結果として4人に1人が辞退するという現状がある。実際に、提供を辞退したことがあるいおりさんは、今年6月に適合の連絡を受けたものの、妊活中だったために辞退した。 「不妊治療中だった。年齢のこともあって、1回ダメだったら今度は来月というように時間もかかる。(妊娠を)年齢的に急ぎたかったのもあり、今回はやむを得ずお断りをした」。いおりさんはその他にも過去2度、提供できないケースがあった。1度目は予定が空いていたため採血まで進めたが、もう1人の適合者が提供することになり立ち消えになった。2度目も採血まで進めたが、そこで貧血と診断されてNGになった。 登録者としても、登録した時点では提供できる状態・環境かもしれないが、いつ「適合した」と連絡が来るかわからないのも、辞退を招く課題の一つだ。「登録してから何年後に適合というのもざらにあると思う。その頃には自分の生活状況だったり家族構成が変わったり、いろいろある。自分のタイミングが悪い時期はどうしてもある」と語った。
■提供側も1週間の入院が必要なケースも
本人の都合もあれば、周囲から提供を止められるケースもあるという。日本骨髄バンクによると、ドナーになった従業員に特別休暇を与えている企業・団体は849社(7月現在)。学生ドナーに対して公欠扱いにしている教育機関は14校。国内全体の企業・団体、教育機関の数を考えれば一握りだ。 医療ジャーナリストの市川衛氏によれば、周囲が止めるケースとして「家族が心配することもある。腰の骨に針を指し、中の骨髄を取り出す手術は全身麻酔が必要になる。また別のパターンでは薬を使って幹細胞を増やし、骨髄の中から血液に溢れてくるところを採取するものがあるが、こちらは1週間ほど入院しなくてはいけない。さすがに負担が大きいと、家族からストップがかかることがある」と説明した。 一方で、様々な自身の都合により、提供を辞退したものの、人助けができなかったと罪悪感を抱く人もいるという。骨髄を提供しても何かしらの報酬を得られるわけでもなく善意に支えられているが、ドナーになることのハードルが高くなるほど、登録する人が減る恐れもある。EXITの兼近大樹も「家庭の事情で断らなきゃいけない人に、外野が批判していたら登録する人がいなくなる。外野が騒げば騒ぐほど当事者がどんどん困っていくというとんでもない悪循環だ」と述べた。