「オーガニックで会社を大きくする」は「客に嘘をつく」に近い/タオルの聖地・今治から風雲児が目指す、中小企業が救われる社会とは~イケウチオーガニック後編
◆消費経済のゲーム、情報公開でひっくり返す
―池内代表の今後の展望はいかがでしょう。頭の中には「ブランドの航海図」が描かれているとのこと。最終的に到達したいものづくりとは? 池内:原材料を商品化し、お客様の手に渡るまでの過程は不透明ですよね。 うちは他社に比べたら圧倒的に公表していますけれど、それでも全ての開示はできていません。 隠し事が一切なくなれば、お客様はあらゆる視点で物を選べる。 そのために、どこまで僕らが裸になっていけるか。 そこを進めないと新しいお客様は次々に入ってきてくれません。 うちのような小さい会社だからこそできる取り組みですし、「イケウチオーガニックの透明性が支持されている」と分かれば、他の会社も少しずつ変わってくれるかもしれません。 ―御社を起点にどんどん広がっていく可能性がありますね。阿部社長の展望はいかがでしょうか? 阿部:池内が申し上げたように、現代では「消費経済」というゲームに最適化することを求められています。 「透明性」に関する情報開示よりも、直接消費の動機に繋がりやすい「見た目の変化」や「機能・付加価値の追加」の情報が重視されているように感じます。 でも、その裏ではトレードオフによって失われているものもあるわけです。 そちらの方が実は大事なんだけれども、そこに目を向けていたら資本経済のゲームでは負けてしまう。 池内が引っくり返そうとしているのは、そこなんですよ。 時代の空気を読んでアジャストしながらも、「ちょっと先」を行き続ける。 その匙加減を見極めながら、軸をブラさず邁進したいと思っています。
◆ポスト「スティーブ・ジョブズ」は?
―現在の二軸体制は、対照的な2人だからこそ確立されているように思います。次の事業承継をどのように考えていますか? 池内:おっしゃる通り、僕と阿部が正反対だからこそうまくいっています。 僕もいつまでも代表でいるわけにはいきませんし、阿部と真逆のタイプをもう一人育てておかないと、社が違った方向に行くおそれがあるなと。 ―阿部社長いわく、池内代表はタオル界のスティーブ・ジョブズという異才。ポスト池内代表の育成となると、10~20年がかりの大仕事では? 阿部:必ずしも池内と同等の資質を持っている必要はないと思います。 大変ラッキーなことに、我々には「お客様」という言わば社外監査役が大勢いらっしゃる。 うちの歴史をよくご存知ですし、池内のような眼をもって「ブランドとしてブレているんじゃないの」と姿勢をバシッと正してくださる。 そこは大きな強みです。 会社の在り方も今後5年で一変すると感じています。 中小企業の社長が意思決定権を掌握する「ヒエラルキー型」ではもう回らなくなっていく。 特定の能力に長けた方が有機的に集まってくる「プロジェクト型」で、一丸となって社会を良くしていく方向になるのではないでしょうか。 その意味でも、我々のブランドを芯まで理解してくださっているお客様の存在は何物にも代えがたい財産です。