“周回遅れ”の最低賃金…1500円へ引き上げは政治的賭け? 投票に行く前に要チェック!【数字でわかる今の日本】
経済界から「払えない企業はダメ」の声も
賃金を払うのは経営者側であるから経済界の反応は複雑だ。 中小企業が多い日本商工会議所の小林健会頭は最低賃金引上げの方向性に異論はないとしながら、支払い能力の点から慎重な姿勢を示す。 構造改革に意欲的な経済同友会は3年以内に1500円の達成を要望し、新浪剛史代表幹事は「払えない企業はダメ」と言い切って話題を集めた。 経団連の十倉雅和会長は「チャレンジングであってもいいが、達成不可能であれば混乱を招く」と間に入る。 ただ経済界のこれまでの姿勢からすると、1500円への引き上げに向けた時期を短くすることは受け入れざるをえないとみて、期間・企業支援等の“条件闘争”に入っていくと見ていいのではないか。
貧困対策であり経済対策
そして何よりも働く側にとっては最低賃金はセーフティーネットだ。 しかし最低賃金で満足な暮らしができることは実際にはほとんどなく、これだけが収入だと最低限に近い生活の維持しかできない。 厚生労働省の調査(ことし5月、民間委託)では、最低賃金近くで働く非正規労働者で時給が上昇した人のうち4分の3が「最低賃金が上がったから時給が上昇した」と答えた。 同じく4分の3が「今後も最低賃金を上げるべき」。そのうち6割の人が「現在の額では生計を維持するために十分な水準でない」と思っているという。 この数字をまず貧困対策として重く受け止める必要がある。 もちろん、金額が十分でないために、学生や専業主婦のパート・アルバイトとか、年金では足りない高齢者といった、実際は別の収入がある人が最低賃金で働いているケースも多い。“ちょっくら働きにでも行くか”と近所の従業員募集の貼り紙を見ると、「時給〇円~」の数字が見事なくらいに最低賃金の動きとリンクしている。 これらの収入を補う人たちにとって賃金上昇は消費に直結する。その意味で本来は社会政策だった最低賃金問題が今や経済対策、もっと言えば景気対策にもなっている。