金融のプロ、香港で再就職困難-5年前の引く手あまたから一転
(ブルームバーグ): 勤めていたファミリーオフィスの経営者が香港を去った時、エリック・リーさんは再就職が厳しいことは覚悟していた。しかし、これほど大変だとは想像していなかった。
1年5カ月が経過した今も、リーさんは職探しを続けている。月6万香港ドル(約116万円)近い家賃に加え、年100万香港ドルに上る子供の教育費が重くのしかかるが、一番苦しいのは就職難がまだ峠を越していないかもしれないという恐怖と、その事実を徐々に受け入れつつあることだという。
わずか5年前は、リーさんのような中国の専門知識を持つ金融プロフェッショナルはUBSグループやシティグループなどの金融機関から引っ張りだこだった。
小米や美団などの新規株式公開(IPO)により、金融の中心地としての香港の地位はニューヨークと張り合うレベルまで高まった。こうした金融プロフェッショナルの努力が寄与し、香港と米国に上場する中国本土企業の時価総額は計6兆米ドル(約908兆円)を超えた。
米中の地政学的緊張が資本市場に大きな打撃を与えている現在、株価低迷と経済の見通し悪化で香港のIPOは干上がっている。また中国共産党の習近平総書記(国家主席)が推し進めるデータセキュリティーと金融市場規制の強化により、中国企業による資産取得や海外上場は難しくなっている。
かつてシティでも働いていたリーさんは、「中国の上昇軌道や国内外の金融市場緊密化を当然のことと思っていたが、今は一時的な現象に過ぎなかったと理解している。恐ろしい」と述べた。
金融ディール仲介の中心地だった香港は、最大級のダメージを受けた。さらに米国の大手銀行で相次いだレイオフやグローバル資本の対中投資引き揚げが、国際金融センターとしての香港の役割低下に追い打ちをかけた。
人員削減「続く」
人材あっせん会社ロバート・ウォルターズのマネジングディレクター、ジョン・ムラリー氏によると、香港で求職中のエントリーレベルより上の金融専門家は同氏が扱う求職者数に基づくと「数百人」に達する。同氏は「香港は非常に脆弱(ぜいじゃく)な市場であり、人員削減はまだ続くだろう」と語った。