違和感から進化、アンジュルム 【山崎あみ コラム音楽の森】
与えられたイメージに合わせることに違和感を覚え、自ら脱皮し、変貌と進化を遂げている女性アイドルグループ「アンジュルム」をご紹介します。 結成は2009年。当時は「スマイレージ」という名の4人組で、翌年デビューしました。キラキラまぶしく、声も愛らしく、どこかに行ってしまいそうなはかなさもあり、心を奪われました。ただ、オリジナルメンバー4人の体制が続いたのは2年数カ月。私が彼女たちの情報を追えていたのもその頃まででした。メンバーは卒業や引退、新加入を重ねて、入れ替わっていきます。 約12年後の今年、TikTokで偶然目にした、松本わかなさんという女の子に衝撃を受けました。今年で17歳の彼女は、まるで赤ちゃんのような見た目とは裏腹に、パフォーマンス能力は極めて高く、肝が据わっている。栄養バランスを考えたお弁当を他のメンバーのために作りもすれば、新聞に書評を寄せたこともある多才ぶり。近年まれに見る逸材だと感じます。彼女がいるグループこそが、スマイレージが14年に改名したアンジュルム。再び注目しはじめると、驚くほど変化していました。 元々、スマイレージ時代はキャッチフレーズが「日本一スカートが短いアイドル」で、前面に押し出していたのはかわいらしさでした。しかし、初代リーダーの和田彩花さん(19年に卒業)は、求められる従来型アイドル像と、本来の自分らしさとのギャップに悩んだと後に明かしています。そして、グループ改名後は自分たちが好きな衣装、髪形、メークへと徐々に変えていき、お互いに「いいね」と言い合い、さらには自立した女性像へと、表現を新たにしていったそうです。 進化したアンジュルムもとてもカッコイイ。パフォーマンスは伸び伸びとして自信がみなぎり、「私は私だし、こんな私は最高だ」と声が聞こえてくるようです。その姿にスカッとして、気持ちを引っ張り上げてもらえます。最新シングル「美々たる一撃」は「さあ、行っといで!」と彼女たちに背中を押される感覚になります。事務所が一人一人の個性を尊重しているのも、すてきです。 「個性」という言葉は便利で多用しがちですが、リーダーの上國料萌衣(かみこくりょう・もえ)さんはじめ、上述した松本さんら現メンバー10人は、実にカラフル。例えば川村文乃(かわむら・あやの)さんは「1級マグロ解体師」の資格を日本で9人目、女性では初めて取得。橋迫鈴(はしさこ・りん)さんは爬虫(はちゅう)類好きが高じて、普段は爬虫・両生類が載る専門誌の表紙を、大きなトカゲを手に笑顔で飾りました。皆さん引き出しが多くてのけぞります。 山崎あみ(やまざき・あみ)/ 1997年生まれ、東京都出身。音楽大卒。interfm「MUSIClock」(略称みゅじろく。月―木曜午前7時)メインDJ。YouTube番組「山崎あみ『うるおう』リコメンド」(うるりこ。共同通信社制作)金曜出演。初の写真集「Cantabile」発売中。