【解説】世界が注視する台湾総統選挙 本格的「三つどもえ」に 最終盤の注目点は
■70歳の習近平氏 思い描く「台湾統一」の道筋は
――中国の習近平氏は国家主席の任期制限をなくしたとはいえ、現在70歳。自身の手で台湾との統一を成し遂げたいとの思いがあるなら、民進党政権が今後も続く事態になった時、強引な手段に出る懸念は? 「統一を成し遂げたいとの気持ちは間違いないが、武力行使のコストが高すぎるということも明確になっている。武力の『脅し』で、台湾の人たちの諦めを引き出すというやり方が見えてきている。浸透工作を強化し、時間をかけて台湾を丸ごと取り込むことを考えているように見える。これもコスト・時間がかかるが、武力行使と比べるとずっと低い」 「さらに、武力行使した場合にはアメリカの介入や、西側諸国の経済制裁など強烈なリアクションが考えられるが、カギ括弧つきであれ『平和的統一』であれば日米も手出しができない。そこに力をいれてきているようだ」 「ただ中国の軍事侵攻がない、台湾有事がないと決めてかかるのは全く危険だ。台湾有事を抑止する態勢を固めておくこと(の必要性)は言うまでも無い」
■将来の日台関係は
――各候補が当選した場合の対日関係は? 「まず民進党の頼清徳氏は蔡英文路線の継続なので、いまの非常によい日台関係の継続になるし、頼氏自身も日本への期待が大きいので、さらに活発な交流に向かう可能性もある」 「国民党の侯友宜氏は7月に来日し、日本重視を打ち出している。一方で、国民党は蔡政権がアメリカにべったりになりすぎたと非難し、『米中の間で利益を最大化していく方向に切り替える』と言っている。これは、日米を軸に中国の武力行使を抑止するというアメリカの戦略に影響を与える可能性があり、日本にとっても要注意だ」 「民衆党の柯文哲氏については、国民党との一本化交渉の過程で将来の連立政権を組むことで合意している。柯氏自身の対中政策は、曖昧で立場をはっきりさせないというものだが、連立政権になることを考えると、国民党勝利の場合とほぼ同じになることが予想される」 米中対立という大きなうねりのなかで、約1950万人の台湾の有権者が今後4年間を託すリーダーを自らの手で選ぶ総統選挙。強大な中国の圧力に直面しながらも、民主的な選挙と平和的政権交代を積み重ねてきた「台湾人」たちが出す新たな答えに、世界が注目している。