【解説】世界が注視する台湾総統選挙 本格的「三つどもえ」に 最終盤の注目点は
■1位キープの頼清徳陣営 立法院で「過半数割れ」の可能性も
――頼清徳陣営の状況は? 「世論調査でずっと1位をキープしているが、野党連合の話が盛り上がったところで話題の中心から外れた。『民進党は8年やったからもう十分』という野党の政権交代のメッセージが広がり、そのあおりを受けて、頼氏はなかなか支持を伸ばせない展開になっている」 「ただ、民進党は組織力もあり蔡英文総統も応援に走っている。(駐米代表を務めた)副総統候補の蕭美琴氏の評判もまぁまぁよい。最後にもう一度態勢を固めて、総統選挙と立法院選挙の過半数、両方を狙うという目標でいる」 一方で、立法院選挙では過半数を割り込む可能性があるという。 「中間派の有権者の中には、台湾の安全保障などを考えて頼氏に投票するが、民進党の権力強大化を警戒し、立法院は国民党候補に入れるという人が、数が多いわけではないが重要な選挙区で出てくると思う」 小笠原氏は、頼氏が当選しても立法院は国民党が多数派となる「ねじれ」になりそうで、その場合の政権運営は「とても厳しくなる」と指摘した。
■中国の揺さぶりが国民党の援護射撃に
――中国の総統選挙への態度は? 「台湾独立勢力と位置づけ、敵視している民進党政権を何としても終わらせたいというのは秘密でも何でもなく、中国の方針だといえる。今年の動きを見ると、中国軍機が台湾海峡の中間線を越えたり、軍艦が接近したりすることを繰り返している。軍事的な圧力で有権者の恐怖感を誘い出そうとしている」 「ここでポイントになるのは、国民党は今回の選挙を『平和か戦争か』の選択だと位置づけていること。中国のやり方は、形としては国民党への援護射撃という形になっている」 「一方で、輸入禁止にしていた一部の台湾産果物の輸入を復活した事例があるなど、『北風と太陽』をいろいろと出している。最近は経済面の北風で、(12月)15日に『台湾が一部中国製品の輸入を禁止している、貿易障壁だ』という調査結果を発表した。『適切な措置をとる』とまで言及し、民進党政権が続くと中台の貿易で影響が出ると示唆をした。こうして有権者の投票行動が変わるのを中国側は狙っているとみることができる」(注:取材後の12月21日、中国政府は台湾から輸入している化学製品など12品目の関税の優遇措置を2024年1月1日から停止すると発表した)