【日本は地熱大国になれるか?】世界が羨むポテンシャル 純国産エネルギーで「地熱革命」を起こせ
米国が本気で取り組む次世代地熱のポテンシャル
在来型の地熱発電の普及には乗り越えるべき課題が数多くある。しかし、元経済産業審議官の片瀬裕文氏は「地熱発電は技術のイノベーションにより、飛躍的に成長する時期に差し掛かっている」と話す。 実際、米国は地熱発電を大幅に拡大させようとしている。米国エネルギー省(DOE)は今年3月、「Pathways to Commercial Liftoff:Next-Generation Geothermal Power(次世代地熱発電:商業化への道)」というレポートを発表した。これは、現在世界各地で実証実験が行われている地熱増産システム(EGS)やクローズドループという次世代地熱発電の方式(下記図)が30年頃に商用化できることを示しており、30年には全米で10~15ギガワット(GW)、50年までに90~300GW(原発90~300基分)の発電所が建設される見通しであるとしている。現在の米国の地熱発電量が3.4GWであることを踏まえると、革新的な内容といえる。 このレポートには二つのポイントがある。一つは、地熱の資源量が圧倒的に拡大するということだ。在来型の地熱発電は、地下に「熱」「透水性(水)」「地熱貯留層(器)」という3つの条件が揃わなければ開発は困難だ。しかし、次世代地熱発電は、人工的に器を作り出し、地上から水を注入するため、原理的には熱源さえあればどこでも発電が可能になる。DOEは米国の地熱資源量は、在来型の地熱発電を前提とした場合の40GWから、次世代地熱により5500GWに拡大するとしている。
もう一つは、個々の開発プロジェクトに銀行が融資しやすくなるということだ。在来地熱は十分な熱水が地下にあるとされていても、長期間にわたり減衰せずに利用できることの評価が難しく、米国では銀行が地熱発電に融資しにくいという状況があった。しかし、次世代地熱は地下のリスクが極めて小さくなるので、銀行が融資しやすくなり開発スピードも速くなることを示している。