箱根駅伝あの“伝説の1区”から3年「兄的にはドキドキしちゃった」吉居兄弟のカワイイ関係…弟・吉居駿恭も“大逃げ”成功、中央大・藤原監督が語る「兄弟の差」
藤原監督が語った「兄と弟の違い」
今回の弟・駿恭の走りについて、藤原監督は「今回、何パターンかレースの想定をしていましたが、そのうちのひとつではありました」と話していた。 晴天の日の独走、1時間01分07秒の区間賞。そして2位の駒澤大の帰山侑大に1分32秒、国学院大の野中恒亨に1分40秒と、有力校に大差をつけての1区区間賞は、中大にとって最高のロケットスタートとなった。 それにしても、吉居兄弟は中大にとっての至宝だ。 同じ1区、同じような展開で区間賞を獲得したとはいえ、当然のことながら持ち味は違う。藤原監督によれば、「大和は将来的にマラソンが向いていると思いますし、駿恭はトラックで勝負できる瞬発力があります」と語る。 私も幾度も兄弟の話を聞いてきたが、弟・駿恭には独特の感性があると思う。 昨季、駿恭はトラックで好タイムを出したものの、それが駅伝にスムースに移行しなかった。駿恭はその理由をこう説明してくれた。 「僕の場合、スパイクから厚底シューズに移る時に、慣れるまでにちょっと時間がかかるんです」 繊細という単語にはポジ、ネガの両義があるが、足裏、そして下半身の違和感に敏感なことは、駿恭の強みだと思う。歯車が完璧に噛み合った時、美しい走りを見せるからだ。
吉居駿恭が“衝撃的敗戦”を忘れさせた
今年の中大には、美しい「ゲームチェンジャー」が必要だった。 前回大会では優勝候補の一角と目されながら、不運なことに12月20日過ぎから部内に感染症が広がった。走った10人中、健康だったのは吉居駿恭と湯浅仁(現・トヨタ自動車)のふたりだけで、総合13位に沈んだ。 そして今季、トップ通過を目指した箱根駅伝予選会では溜池一太(2区区間9位)、本間颯(3区区間賞)らの主力をケガで欠き、6位での通過となった。 期待が大きかった全日本でも、3区で本間が6位に上がったが、勝負どころの7区で吉居駿恭が区間14位の凡走、最終的に12位にまで沈んでしまった。レース直後、藤原監督も憔悴した様子で、「どうしてこうなってしまったのか……私も戸惑っています」と話すほどの衝撃的な敗戦だった。 その後、部内では幾度となく話し合いが行われていた。学年ミーティング、全体ミーティング、監督との話し合い。吉居駿恭は「結構、みんな仲が良いんですが、それが甘さにつながっている気がして」と話していた。藤原監督も「学生たちが覚悟をもって、流れを変えなければいけません」と厳しい表情を浮かべていた。 そして2025年1月2日。中大は甦った。 あわや往路優勝の見事なつなぎ。やはり、吉居駿恭の果敢な飛び出しが、中大にとって幸先の良い「厄落とし」になった。 吉居駿恭は、今回の自分の役割をこうまとめた。 「このところ、中大の駅伝は1区から流れないことが多くて、チームとして楽しい駅伝が出来ていなかったんです。今日はこうして自分が先頭でたすきを渡せて、出来るだけ多く先頭を走って、みんなにも楽しい駅伝にしてもらいたいなという気持ちがありました」 復路では、中大が「追い上げる楽しさ」に目覚めれば、レースは面白くなる。藤原監督は「今日のレースは100点」としながら、こう話した。 「青学さんに“ピクニックラン”させないように抗っていきたいです」 青学楽勝ムードの抵抗勢力になれるか、中央大学。 <《青学大キャプテン》編へ続く> ◆◆◆ 1区区間歴代記録 1位 1時間00分40秒 吉居大和(中央大・2022年) 2位 1時間01分02秒 篠原倖太朗(駒澤大・2024年) 3位 1時間01分06秒 佐藤悠基(東海大・2007年) 4位 1時間01分07秒 吉居駿恭(中央大・2025年) 5位 1時間01分13秒 米満怜(創価大・2020年)
(「スポーツ・インテリジェンス原論」生島淳 = 文)
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